「核抑止、地域の緊張高める」 長崎大レクナが日米韓協議など提言 核兵器の使用リスク減へ

政策提言について説明する鈴木達治郎教授(左)と吉田文彦センター長=長崎市文教町、長崎大

 北東アジアで核兵器が使われるリスクを減らすため、国ごとや2国間、多国間で採るべき22項目の政策の提言を、長崎大核兵器廃絶研究センター(RECNA=レクナ)などがまとめた。「日米韓の拡大核抑止協議で核リスク削減を目標とした話し合いをする」「各国は防衛費の2%を公衆衛生や気候変動、貧困、不平等対策に取り組む国連基金に振り当てる」といった政策を挙げた。実現可能性の高い提言を目指して、これまでに実施されたり検討されたりした政策を組み合わせ、新たなアイデアも加えたという。
 3日にレクナの鈴木達治郎教授らが長崎市内で記者会見し、概要を説明した。レクナは韓国を拠点とする非政府組織(NGO)などと共に、北東アジアの核使用リスクについて2021年度から3年間の共同研究を進めてきた。提言は全文が英語で、共同研究の最終報告となる。
 これまでの研究を踏まえ、核兵器による威嚇で安全保障を図ろうとする「核抑止」が、かえって地域の緊張を高めて安全を遠ざけていると位置付けた。その上で、「米中は核戦略の安定化について対話を進める」「米国は、中国や北朝鮮との共存の道を求め、朝鮮戦争の終結を考えることを改めて表明する」など、緊張緩和や信頼醸成を段階を追って進め、核抑止からの脱却を目指すよう求めた。
 日本への提言では、核保有国に「核の先制不使用」政策を促すため「米国議会の『核兵器先行使用制限法』成立に向けた動きを同盟国として支持し、中国と北朝鮮にも同様の法令を設けるように働きかける」などを盛り込んだ。
 鈴木教授は共同研究を始めた後、ロシアのウクライナ侵攻で危機感がいっそう高まったとして、「『長崎を最後の被爆地に』という訴えこそが野心的で現実的。各国政府は提言の22項目を可能なところから採用し、緊張緩和に取り組んでほしい」と強調した。
 提言の要旨は日本語、英語など5カ国語でレクナのウェブサイトで公開している。今後、ワークショップなどを通して発信していく考え。

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