観光地でない「1泊2日で8万円」里山ツアー 首都圏の参加者は大満足 そこにあった魅力とは【岡山】

岡山発着で、行き先は「観光地ではない里山」。そのツアー料金は8万円超えです。3月に行われたあるツアーには、首都圏などからの参加者で、あっという間に定員が埋まったっといいます。

場所は、鳥取との県境に近い真庭市中和地区。いったいどんな魅力があるのでしょうか?

岡山発着の里山ツアー 料金は「8万円超え」人気の訳は?

【画像①】のような、渓谷の織りなす神秘的な光景に感嘆の声が上がります。

(東京からの参加者)
「白い雪も相まって力強いパワーを得たような気がしました」

風雪に耐えてきた老木からは、春の息吹も感じられました(【画像②】)。

(神奈川からの参加者)
「新しい命もちゃんと芽生えてきていて、『命が連綿とつながっていく様』を見せてもらっている」

岡山県真庭市、人口およそ600人の集落・中和(ちゅうか)地区です。

先月、地域の自然と食を満喫する1泊2日のツアー「山懐(やまふところ)」が開かれ、東京などから16人が参加しました。

参加費用は「岡山駅発着で8万2500円」と決して安くはなく、また地区には観光施設と呼べるものもほとんどありません。

にも関わらず、ツアーの2週間前に定員が埋まりました。なぜ、都会から素朴な里山に人々が集まるのでしょうか。

(神奈川からの参加者)
「『蒜山耕藝』さんが作っているものが素敵なので、『一体どういうところで作っているんだろう』って思いますよね」

(東京からの参加者)
「『オカズデザイン』さんが企画していると聞いて、『ぜひ行きたい』と思って来ました」

理由は、今回のツアーを企画した3組の夫婦(【画像③】)にありました。中和地区で暮らす移住者たちの存在です。いったい、どんな人たちなのでしょうか?

ミシュラン獲得うなぎ店の夫婦も 皆が会いたかった「移住者たち」

(農家 高谷裕治さん )
「最初にあるのは、『中和を紹介したい、知ってもらいたい』というのが一番」

無肥料・無農薬の自然栽培で作物を生産する、高谷夫妻です。2人は農業に最適な土地を求め、13年前に首都圏から移住してきました。

インターネットで販売する野菜や加工品は即完売。蒜山耕藝の名義で活動し全国にファンを持つ農家です。

(蒜山耕藝 高谷裕治さん 絵里香さん)
「ここに来て時間を過ごすことで、『自分を見つめ直す』だったり『自然のことを考える』とか前向きな気持ちになってもらえたら」

2組目は、東京と中和で2拠点生活を送る吉岡さん夫妻です。東京で器と料理の店を運営。またドラマや映画の料理監修も務める「オカズデザイン」というユニット名で幅広い活動を行っています。

(オカズデザイン 吉岡秀治さん 知子さん)
「ここの水のよさですとか、空気のよさ。本当にここに住んでいる方にとって『当たり前のことが全然当り前じゃない』だということを、一番お客様目線で感じているのは私たちなのかなと思う」

そして村田夫妻は、かつて東京・中目黒でミシュラン一つ星に輝くウナギ専門店を経営していました。「自然の中で暮らしたい」という夢を叶えるため4年前に移住。現在は中和でウナギ専門店を開業しています。

(蒜山鰻専門店 翏 村田朋子さん)
「何を感じてもらいたいとかは全然なくて『感じるまま』に感じてほしい」

(蒜山鰻専門店 翏 村田翏さん)
「この中和村、『なにが良かったんですか?』と聞かれても、正直言葉にすると意味合いが変わってくる。『言葉にできない何か』を感じてもらえたらいいのかな…」

里山には「言葉にできない豊かさ」があった

日々の暮らしの中でしみじみと感じる、言葉にできない豊かさを移住者の目線で表現した「山懐」ツアーです。

ツアーガイドとして参加した地元出身の大美康雄さんです。自分が生まれ育った山里の散策を、参加者が心から楽しんでいることに驚きを感じていました。

(大美康雄さん)
「ある意味、『新しい価値観を提案してもらった』と個人的には感じてまして、『田舎暮らしが見直される一つのきっかけになるんじゃないか』というような気がしています」

イチゴを焼いてお茶に?!「里山は遊び場!」

ツアー中に開かれたのは、一風変わったお茶会。笹の葉やクロモジの枝など、身のまわりの物をなんでもお茶にしてしまおうというものです。

他にもイチゴやオレンジなど、想像を絶するお茶の数々(【画像④⑤】)に参加者は目からウロコ。アイデア次第で里山は『楽しみが尽きない遊び場』になることを知りました。

(滋賀からの参加者)
「やってみたいなと思うことがたくさん増えて…今度から、果物を見たら焼きたくなって、お湯を注いでお茶にしてみたいと思うようになるかも」

ツアーのクライマックスはコース料理「都会じゃ味わえない贅沢な味」

そして参加者が最も楽しみにしていたのが、高谷夫妻の野菜や、地域でとれた山菜などで作るコース料理です。

メニューを考案したのはうなぎ店の村田さん。中和の魅力を一皿一皿に込めました(【画像⑥⑦】)

(蒜山鰻専門店 翏 村田 翏さん)
「自分たちが豪華と考えるのは、場所とか空気感、ここで湧いている水。これをいかに皿に落とし込めるか」

「中和地区の水で米を炊いただけでも、全然味が違うんですよ。葉物を湯がくだけでも、湯がいたスープですらおいしいと思える。都会じゃ味わえない贅沢ですよね」

刻一刻と変わる自然の表情。生きとし生けるものを育む清らかな水。

素朴な里山には、私達が忘れかけている大切な何かがありました。

(滋賀からの参加者)
「じっくりと、自分とも外とも向き合える時間になって。なかなか普段生活していたり仕事をしていると、そういう所は大切にできない部分なので、改めて『自分の中をリセットする』という意味でも、すごく充実した時間でした」

(神奈川からの参加者)
「『すてきな所だろう』と思って来たんですけれど、それ以上にすてきで、また違う季節に訪れてみたいと思いました」

うっすらと雪の残る山の懐に抱かれて、参加者たちは「言葉にできない豊かさ」を満喫したようです。

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