「息子は5時間しか命が持たなかった」遺族の訴え 自転車ヘルメット着用率はどうすれば高まるのか

新年度が始まり、「自転車のヘルメット着用の努力義務化」から1年が経ちました。ヘルメット着用への意識はどう変化したのしょうか?街で取材してきました。

1年前と同じ場所でリサーチ 着用率は「微増」...

(杉澤眞優キャスター)
「ヘルメット着用が努力義務化されてから1年。人々の着用率はどう変化しているでしょうか」

岡山市中心部で通勤・通学時間帯の午前7時半から30分間、ヘルメットを着用している人をカウントしてみると…

結果は…128人中、着用していた人は15人。努力義務化の直後となる1年前の調査結果(【画像①】参照)と比較すると、わずかに増加しています。

香川県でも、警察の調べによると4.7%→13.3%と増加傾向にあることが分かりました。着用している人からは、「努力義務化に伴い意識が変わった」という声も。

(着用している人)
「被っているのは、帽子型のヘルメットです。被り始めたのは、1年ぐらい前からかな。娘が心配して送ってきてくれました。習慣になったから被ると思います」

(着用している人)
「40分ぐらいかかります、家から大学までが。危なさそうなのでヘルメットがある方が安全だと思う」

なぜヘルメットを被らない?「義務化になっていない」「周りが被っていない」

一方、着用していない人に理由を訪ねると…

(着用していない人)
「まだ義務化にはなっていないですよね。被らない一番の理由は『見た目』ですかね」

「周りの友達でも、着用している人を見たことがないです。時々危ない時はあるんですけど、だからヘルメットしようとはならない」

ヘルメットを被らないと「命を落とす確率」は3.5倍に

警察庁の発表でも岡山・香川の着用率は全国平均13・5%を下回り、依然着用への意識は低いのが現状です。岡山県警ではあらためてへルメット着用を呼びかけています。

(岡山県警本部交通企画課 大場優香さん)
「去年1年間、自転車に乗っていて交通事故に遭われて亡くなられた方は6人いらっしゃいます。そのうち4人の方は、残念ながらヘルメットを被っていらっしゃらなかったんですね」

「自転車で転倒すると、頭にけがをすると、やはり命に関わる大きなけがになることが多い。ヘルメットをしている人としていない人を比べると、過去の統計を見てもだいたい3.5倍ぐらい命を落とす確率が高い。自転車に乗るときは、必ずヘルメットを被っていただきたいと思います」

全国1位 愛媛県の着用率は59.9% なぜこんなに高い?

( コメンテーター 春川正明さん)
「自分が自転車乗ってたときは、あまり分からないんですけれど、車を運転しているとやっぱり、『まわりを走る自転車の走行って危ないなあ』ってものすごく気を使いますよね」

あらためて、この着用率、全国で最も高いのは愛媛県で59・9%とかなり高い着用率です。理由を愛媛県警に聞くと、全国に先駆けて2013年から条例でヘルメット着用が定められ、さらに愛媛県内全ての高校でも校則で定められています。

「息子はトラックに20メートル跳ね飛ばされて...」

背景には、高校生の死亡事故が相次いだことがあります。今回、この校則化のきっかけの一つとなった事故の遺族の方にお話を聞くことができました。

(交通事故で息子を亡くした渡邉明弘さん)
「20メートル先まで跳ね飛ばされてしまったんです。頭を道路に打ちつけてしまってそこから意識がない状態で。5時間しか命がもたなかった」

2014年、渡邉さんの息子の大地さんは、愛媛県松山市内の自宅近くにある信号のない横断歩道で、4トントラックにはねられ命を落としました。

(渡邉明弘さん)
「そのころは『ヘルメットを被る』という文化は愛媛にはまったくなかったので、大地もヘルメットを被っていなかったし、大人たちもヘルメットは被っていなかった」

「社会全体で命を守る意識を」

大地さんの事故は、「ヘルメット着用の努力義務が条例化された後」に発生。愛媛県内すべての高校で、着用が義務化されるきっかけとなりました。ただ明弘さんは、「高校生の着用義務化」に対して複雑な思いがあるといいます。

(渡邉明弘さん)
「高校生って言いなりになるしかないじゃないですか。義務だから被れってなったら仕方なく被るしかないじゃないですか」

「義務化するだけでは事故は減らない」。。。明弘さんは「社会全体で自分の命を守ること」「人の命を奪わないこと」への意識を高める必要がある、と訴えています。

(渡邉明弘さん)
「ただ怒りながらでも、悪かったのは私たち大人の運転マナーが悪かったわけで。自分も、大人の一人としてこれは何とか改善しなけらばならない」

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