小林信彦、伝説的名著に増補改訂を施した最終形態『決定版 世界の喜劇』が4月8日刊行。ライムスター宇多丸も推薦、刊行記念特集上映も同時開催

スラップスティックからロマンティック・コメディまで。喜劇映画の100年がこの一冊ですべてわかる小林信彦の著書『決定版 世界の喜劇』が4月8日(月)に株式会社新潮社より刊行された。 ライムスターの宇多丸が「日本じゃ誰もが、この名著から学んだのです!」と称賛、巧者と名高い91歳の著者が生涯をかけて記録した世界のコメディアンの魅力と300のギャグに、新パート「『世界の喜劇人』その後」を加えた、文字通り「決定版」だ。 かつて、終戦とともに日本に流入してきたアメリカ喜劇映画に魅了された小林信彦少年。大人になってからその衝撃を「書き留めておかねばならない」と決意し、名喜劇人たちの映画をギャグの目線で総点検、標本を作るように一つ一つ紙上に再現したのが伝説的名著『世界の喜劇人』だ。初版は1973年刊行。家庭用ビデオなど存在しない時代に、偏愛するマルクス兄弟をはじめ、チャップリン、キートン、ロイド、アボット&コステロ、ダニー・ケイ、マーティン&ルイス、ボブ・ホープ、ウディ・アレンらのギャグ300パターンを、映画館に通ってひたすら記録した。以来、『世界の喜劇人』は笑いを語る際に欠かせない聖典として映画、演劇、お笑いをはじめ各界に多大な影響を与えてきた。 今回の『決定版』では、新たな写真や索引、新パート「『世界の喜劇人』その後」、著者インタビューや「はじめに」「『決定版 世界の喜劇人』あとがき」を加えた。これにより、ウディ・アレン以降の喜劇人──スティーヴ・マーティン、メル・ブルックス、ジム・キャリー、さらにエルンスト・ルビッチ、プレストン・スタージェス、ビリー・ワイルダーといった監督たちまでをカバー。そしてカバーといえば書籍カバーは、小林さんが長年魅力を伝え続けてきたマルクス兄弟の破壊力抜群なナンセンス写真が飾る。 2021年刊行の『決定版 日本の喜劇人』と対をなす、最強不倒の笑いのバイブル全二冊がここに揃った。

ライムスター宇多丸 推薦

喜劇映画史の基本……日本じゃ誰もが、この名著から学んだのです! 具体的かつ詳細なギャグ分析は、「動画視聴」世代の読者をも、圧倒するに違いない。

本書の刊行を記念した特集上映も開催中

本書に登場する映画から小林信彦がセレクションした特集上映『ザッツ・コメディアンズ・ワンス・モア!』をシネマヴェーラ渋谷にて4月19日(金)まで開催。著者のサイン本も販売する。 上映スケジュールはシネマヴェーラ渋谷のオフィシャルサイトをご覧いただきたい。

著者・小林信彦コメント

喜劇の歴史を振り返る時に、マルクス兄弟やキートン、チャップリンたちだけでなく、ルビッチやスタージェスたちの仕事やジャンルも、むろん無視してはいけない。この『決定版』では〈II〉のパートでそれらを補いました。従来の『世界の喜劇人』を収録した〈I〉と併せて読むことで、喜劇映画百年史の全体像みたいなものを、ごくおおまかにでもわかってもらえたら、と願っています。

©︎ 新潮社

【小林信彦(こばやし・のぶひこ)プロフィール】

1932(昭和7)年、東京・旧日本橋区米沢町(現・中央区東日本橋2丁目)に和菓子屋の長男として生れる。幼少期より、多くの舞台や映画に触れて育った。早稲田大学文学部英文科卒業後、江戸川乱歩の勧めで『宝石』に短篇小説や翻訳小説の批評を寄稿(中原弓彦名義)、『ヒッチコックマガジン』創刊編集長を務めたのち、長篇小説『虚栄の市』で作家デビュー。創作のかたわら、日本テレビ・井原高忠プロデューサーに誘われたことがきっかけで、坂本九や植木等などのバラエティ番組、映画の製作に携わる。その経験はのちに『日本の喜劇人』執筆に生かされ、同書で1973(昭和48)年、芸術選奨新人賞を受賞。以来、ポップ・カルチャーをめぐる博識と確かな鑑賞眼に裏打ちされた批評は読者の絶大な信頼を集めている。主な小説作品に『大統領の密使』『唐獅子株式会社』『ドジリーヌ姫の優雅な冒険』『紳士同盟』『ちはやふる奥の細道』『夢の砦』『ぼくたちの好きな戦争』『極東セレナーデ』『怪物がめざめる夜』『うらなり』(菊池寛賞受賞)などがある。また映画や喜劇人についての著作も『決定版 日本の喜劇人』『われわれはなぜ映画館にいるのか』『笑学百科』『おかしな男 渥美清』『テレビの黄金時代』『黒澤明という時代』など多数。

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