伝えたい「しつけのせいじゃない」 自閉症の娘育てる平山さん 楽しい生活、動画で発信 佐世保

愛鈴ちゃん向けに発達障害用の絵カードで予定を説明する愛理さん(左)と甚也さん=佐世保市小佐々町

 発達障害の中で特定の物事に強いこだわりがあり、対人コミュニケーションが苦手な自閉症スペクトラム障害(ASD)。長崎県佐世保市小佐々町の平山愛理さん(31)は、2歳10カ月の時に「知的障害の伴う自閉症」と診断された長女と家族の日常をインターネットの動画投稿サイト「ユーチューブ」で発信している。
 長女の愛鈴(あられ)ちゃん(4)が誕生したのは2020年2月12日。1歳半ごろまでは「ママ」「だっこ」など約20の単語を話していたが、2歳ごろから単語を話さなくなった。当初は「赤ちゃん返り」だと思っていたが、生後半年の時にてんかんの発作が出たことがあり、ASDと診断された。
 愛鈴ちゃんのように生後、言葉を話していても、その後に言葉を失うことを「折れ線型」の自閉症という。ほかの障害との併発や障害の程度、必要な配慮はさまざまある。
 22年1月、第2子の長男を出産して以降、愛理さんは自閉症について学び始めた。愛鈴ちゃんの特性として偏食はないが、食べる環境によって何も食べられなくなるため、物を置いていない部屋で食事する。慣れない場所への移動や自身のルーティンが崩れるとパニックを起こす。愛鈴ちゃんが号泣すると、愛理さんは静かな場所に移り、落ち着くまで待つ。夫の甚也さん(35)は長期間、家を離れることが多い仕事柄のため、自宅にいる間は目いっぱい体を使い「2人に甘えてもらえるよう全力で遊ぶ」。
 そんな中、愛理さんは折れ線型の自閉症に関する情報が少ないことに気づいた。「それなら自分が発信しよう」と思い立ち、昨年12月「あられちゃんねる」をユーチューブ上に開設。にぎやかな家族4人と周囲の人との毎日を撮影した動画を週1回ほど投稿。わずか3カ月余りでチャンネル登録者は1400人を超えた。

平山家の愉快な日常を発信している「あられちゃんねる」のユーチューブ

 「わがまま」「親のしつけが悪い」-。買い物に行く際や、動画へのコメント欄に心ない言葉を浴びせられることも。それでも愛理さんが伝えたいのは「しつけのせいじゃない」。動画を編集しながら愛鈴ちゃんへの対応を反省する学習材料にもなっている。
 一方で「将来、天才になる」などと言われると戸惑うことも。「相手も返答に困った末の発言だろうが、自閉症にもさまざまな人がいる。愛鈴には普通の生活が送れるよう育っていってほしい」(平山さん夫妻)。
 甚也さんは「自閉症への理解が社会で広がり、障害の有無関係なく誰に対しても優しく接してほしい」、愛理さんは「病気じゃないと思わないで、とも思わないが、一人の個性として認めてほしい気持ちもある」と話す。
 県障害福祉課によると22年10月1日時点で、県内の7~18歳の子ども約13万8400人のうち、発達障害の疑いのある子どもは約9800人と推計される。

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