ローン減免利用進まず 県内、申請わずか3件 住宅対象、県弁護士会「制度知られてない」

能登半島地震で損壊した建物=1月、氷見市内

  ●19日に無料相談会

 能登半島地震の被災者が住宅ローンなどの債務の減免を受けられる制度について、富山県内の利用申請が3月末時点で3件にとどまっていることが8日、県弁護士会への取材で分かった。地震発生から3カ月が過ぎ、被災者の生活や事業の再建を後押しする制度の周知が課題となっている。県弁護士会は潜在的な需要はあるとみており、19日に富山、高岡両市で無料相談会を開催する。

 減免制度「自然災害債務整理ガイドライン」は、災害の影響で住宅ローンなどの弁済ができなくなった場合の救済措置で、2016年から運用されている。東日本大震災を教訓に、被災者が震災前の借り入れに加え、震災後に新たな借金を背負う「二重ローン」に陥らないようにして生活の再建につなげている。

 県によると、能登半島地震で県内の住宅被害(3月27日時点)は全壊232件、半壊687件を含めた計1万6019件に上る。大きな被害にもかかわらず減免申請が3件にとどまっている状況について、県弁護士会自然災害ガイドラインプロジェクトチーム(PT)の大原弘之弁護士は「制度自体を知らない人が多いのではないか」と指摘した。

 弁護士会によると、16年の熊本地震では約350件の申請が受理された実績がある。富山でもまだ申請していない制度の適用対象者は多いとみている。

 制度が適用されれば、債務者は金融機関との合意に基づき、最大500万円の預貯金などの資産を残して債務を返済し、返せない分のローンは免除される。自己破産と違い、個人信用情報として登録されず、申請の費用負担もほとんどないという。

 災害救助法の適用を受けた市町村が対象となり、県内では魚津、入善を除く13市町村の住宅、事務所が該当する。

 一方、適用対象となるかどうかは財産、収入、債務総額、家計の状況などから総合的に判断される。県弁護士会の橋爪健一郎弁護士は、地震前の債務を地震後に借り換えた場合など制度を利用できなくなるケースもあるとし「要件や手続が複雑なのでまずは気軽に相談してもらいたい」と呼び掛けた。

 県弁護士会は19日、県弁護士会館(富山市長柄町3丁目)と県弁護士会高岡事務局(高岡市中川本町)で、無料相談会を初めて開催する。両会場とも午前10時~正午、午後1~3時に受け付ける。弁護士が面談形式で相談に応じる。

 ★自然災害債務整理ガイドライン 東日本大震災を機に、全国銀行協会や日本弁護士連合会などで組織する運営機関が策定した被災者の債務整理に関する取り決め。個人が対象で、住宅ローンや事業性ローンなどの債務を減免できる。最も多額のローンを借りている金融機関に申し入れた後、弁護士などの「登録支援専門家」の支援を受けながら、簡易裁判所の特定調停手続を利用して債務整理を進める。16年4月から適用が開始され、昨年12月末時点で591件の債務整理が成立している。

被災者のローン減免制度について説明する大原弁護士(右)と橋爪弁護士=県弁護士会館

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