フジコ・ヘミングさん死去に群馬県内からも惜しむ声 「元気な姿で迎えたかった」

ベイシア文化ホールで演奏するヘミングさん(左から3人目)=2018年5月

 ピアニストのフジコ・ヘミングさんの死去が報じられた2日、交流があった群馬県内の関係者からは突然の悲報に驚き、惜しむ声が相次いだ。前橋市で今年1月に予定されていたコンサートが延期の後、中止となっていたことから「心配していた」という声も寄せられた。

 楽器専門店「ピアノプラザ群馬」の中森隆利社長(79)はヘミングさんの親族と友人で、長野県軽井沢町で2013年に開かれたコンサートに招待された。記念撮影に照れる自然体な姿や、二つの公演を滞りなくやり遂げたことが印象に残っているとし「『音楽を届けたい』という気持ちの強さを感じた」と振り返る。

 高崎芸術劇場(高崎市)では、22、23年のコンサートでヘミングさんを迎えた。同劇場の串田千明事業企画担当部長(49)は、定番のリスト「ラ・カンパネラ」で「涙を流して聴き入る観客を何人も見かけた」と振り返る。他の出演者が演奏する際はステージの下手に椅子を置き、観客と一緒に演奏を聴いていた姿が忘れられないという。「2千人の劇場をいっぱいにできるような演奏家は多くない。また元気な姿でお迎えしたかったところなので残念」と惜しんだ。

 日本子守唄協会(東京、西舘好子理事長)が子育て支援などの拠点として整備する下仁田町西野牧の旧西牧小には、3年程前にヘミングさんが寄付した愛用品のピアノや自作の絵画が展示されている。

 西舘理事長(83)は「人嫌いだけど人懐こくて、うそをつかない、飾らない人」と回顧。贈られたピアノについて「生前、『私より価値がある』と言っていた。ヘミングさんが奏でようとした音楽や思いが残ってくれるはず」と話した。

 ヘミングさんが描いた原画を元にした版画70点を所蔵する安中市原市のアリス動物病院の蘭(あららぎ)日出哉院長(67)は、同小で作品を紹介し、今年も1日から展示を始めたばかりだった。蘭さんは「高齢で体調を崩していると聞いていたので、来るべき時が来てしまった。コンサートを見に行けずに寂しいが、絵は形として残っているので大事にしていきたい」と悼んだ。

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