京都の築100年古民家カフェ、アーティストの一面も持つ女性が「居心地の良い場所」目指し奮闘

染織と編み物アーティストの顔も持つ森國さん(亀岡市千歳町・KIRI CAFE)

 「かめおか霧の芸術祭(霧芸)」の拠点施設の一つ、「KIRI CAFE(キリカフェ)」(京都府亀岡市千歳町)の責任者(ディレクター)を今年4月から務めている。森國文佳(もりくに・ふみか)さん(25)は「あそこに行けば何かがある、長居がしたくなる。そんな居心地の良い場所にしたい」と意気込む。

 かつての営業日は週末の3日だったが、現在は火、水曜を除く5日に拡大。平日でも1日平均20人ほどが来店するという。飲食メニューや物販の品数はまだ多くないが、充実させたいと考えている。

 染織や編み物のアーティストとしても活動している。その経歴を生かして、飲み物を飲んだり談笑したりしながら編み物をするイベント「kcal cafe club(カルカフェクラブ)」を、月1回程度開く。編み物は一人で黙々と作るイメージが根強いが、「誰かと話しながらやりたい人もいるはず。ゆるく楽しめる場をつくりたかった」と狙いを語る。

 生まれ育ったのは広島市。幼い頃からものづくりに興味があり、中学・高校では美術部に所属していた。高校で授業の一環で、藍を種から育て、冷凍したり煮込んだりして染まり方の違いを研究した。「葉は緑色なのに青く染まるのと、手の加え方で染めの濃さが変わるのが面白い」と、染織の奥深さに引かれた。2017年に京都造形芸術大(現・京都芸術大)染織テキスタイルコースに進んだ。

 同年の夏、学内に貼ってあった「古民家再生プロジェクト」のポスターが目に留まった。今後の課題制作に役立つと勧められて参加。築100年以上の民家をキリカフェにリノベーションする事業で、亀岡との縁が生まれた。18年の開設後は霧芸に裏方として関わり、客としても時折足を運んだ。

 霧芸で同大学の卒業生や教員が、中心的に活躍している姿を見た。「亀岡ならアーティストとして生活できるのでは」と感じ、卒業を控えた昨年3月、6年間過ごした京都市左京区一乗寺から移住。キリカフェでアルバイトをするようになった。

 責任者に抜てきされ、「今は自分の作品をつくる時間が持てないくらい働いている」。苦笑いするその表情からは、充実感が漂っていた。

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