ハウス避難転び動けず 輪島の80代女性が畑で低体温症、死亡

  ●災害関連死30人認定

  ●水分不足/車中泊で持病悪化/認知症進む…

 23日、能登半島地震の災害関連死として初認定された30人は、慣れない避難所生活や車中泊による負担が原因となるケースが目立った。輪島市の80代女性はビニールハウスで避難生活を送る中、近くの畑で転倒。自力で動けず、低体温症で死亡した。震災のショックによる認知症の進行が引き金となった被災者もおり、心身両面で大きな負荷がかかっていたことがうかがえる。

  ●「地震なければもっと長生き」

 「地震がなければもっと長生きできただろうに」。金沢市内の60代男性は声を詰まらせた。男性の母親は輪島市内で一人暮らしを送り、1月1日の地震後に近所のビニールハウスへ避難。4日朝に自宅敷地内で倒れているのが見つかった。

 母親は高血圧と骨粗しょう症で通院していた以外は健康だったといい、男性は「地震でトイレが使えず、用を足す場所を探していたのではないか」と話した。軽度の認知症を患っていた珠洲市の80代男性も避難中に転倒し、家族が病院へ搬送したものの、低体温症で亡くなった。

 比古咲(ひこさき)きみ子さん(87)=珠洲市若山町出田=は、避難先で新型コロナにかかり、その後、敗血症で死亡。23日午後、珠洲市の担当者から関連死の認定を伝える電話を受けた長男の孝さん(60)は「混乱の中でも、避難所なりに(感染)対策はしていた。誰かを責めることはない」と語った。

 特別養護老人ホームで被災した能登町の80代女性は、震災後に認知症が進んだ。食欲が減退し、点滴を打つなどしていたが、体力が衰えて帰らぬ人に。地震や津波、避難生活でストレスを募らせ、持病が悪化する高齢者もいた。

  ●遺族「一区切り」

 関連死の認定を受けた遺族は家族を失ったさみしさをこらえながら「これで一区切りだ」と気丈に語った。輪島市の70代男性は「ようやく気持ちの整理ができる。残された家族が少しでも前を向けるので、認定されたことはありがたい」と話した。比古咲孝さんは亡き母の無念を思い、「行政にはこれから、避難した人の具合が悪くなる前に手を差し伸べてほしい」と願った。

 

  ●認定された災害関連死(各市町公表分)年代、性別、経緯・認定理由

 ■輪島市(認定9件)

90代女性 避難所で新型コロナに感染した結果、うっ血性心不全のため死亡

80代女性 近隣のビニールハウスに避難し、トイレが使用できないため近くの畑へ行き転倒。自力で動けない状態となり、低体温症のため死亡

60代男性 避難所への避難による生活環境の激変により心身に相当の負荷が生じ、専門的な医療を受けることができない状況で基礎疾患が悪化した結果、肝不全のため死亡

70代女性 震災後の避難所生活や水分の補給不足、薬の不足、睡眠不足、運動不足、転居など生活環境の激変により心身に相当の負荷が生じた結果、急性心筋梗塞のため死亡

70代男性 避難所でインフルエンザに感染した結果、両側肺炎のため死亡

70代女性 非公表

90代男性 非公表

その他2件はすべて非公表

 ■珠洲市(認定14件)

60代男性 車中泊や発災直後からの復旧作業が心身への負荷となり持病がさらに悪化した結果、虚血性心疾患のため死亡

80代女性 震災によるショックやストレスに加え、断水の入所施設から市外避難所への避難による生活環境の激変により心身に相当の負荷が生じた結果、多発性脳梗塞を原因とした肺炎のため死亡

70代女性 震災による転倒で足を負傷し歩行困難となり、活動量が低下した結果、急性肺血栓塞栓症のため死亡

90代女性 震災のショックにより心身に相当の負荷が生じた結果、避難中に意識を喪失し、くも膜下出血のため死亡

80代男性 軽度の認知症でもあり、避難中に転倒後、自力で動けない状態で発見。救急搬送できず家族が病院へ搬送したが、低体温症のため死亡

80代女性 避難所で新型コロナに感染し、基礎疾患も相まって全身状態が悪化した結果、敗血症のため死亡

80代女性 避難所への避難による生活環境の激変により心身に相当の負荷が生じた結果、肺炎を引き起こし心臓死の疑いのため死亡

90代男性 車中泊や避難所生活による生活環境の激変により心身に相当の負荷が生じ、基礎疾患が悪化した結果、腹部大動脈瘤のため死亡

90代女性 入院中の病院が被災し、転院の際の長時間に及ぶ悪路での移動により、心身に相当の負荷が生じた結果、消化管出血のため死亡

90代女性 入所施設の被災や他施設への移動といった生活環境の激変により心身に相当の負荷が生じた結果、うっ血性心不全のため死亡

その他4件はすべて非公表

 ■能登町(認定7件)

90代以上女性 避難所への避難、それに続く親族宅への避難などによる生活環境の激変により心身に相当の負荷が生じた結果、食欲が低下し、循環器系疾患のため死亡

80代男性 津波からの避難や震災によるショック・ストレス、避難所での生活環境の激変により心身に相当な負荷が生じた結果、基礎疾患と相まって急性心不全のため死亡

非公表女性 車中泊や避難所など生活環境の激変により心身に相当の負荷が生じた結果、体力が低下し誤嚥のため死亡

80代女性 特別養護老人ホームで被災。震災後は認知症が進み、食欲が減少し、点滴を打つなど、環境の激変により心身に相当な負荷が生じた結果、体力が低下し死亡に至った

70代男性 車中泊や避難所など生活環境の激変により心身に相当の負荷が生じた結果、基礎疾患と相まって心臓突然死のため死亡

90代以上女性 震災のショックや余震の恐怖、生活環境の激変により心身に相当な負荷が生じた結果、急激に体力が低下し死亡に至った

非公表男性 非公表

© 株式会社北國新聞社