南島原の地滑りから10日 梅雨入り控え、不安の声 長崎県と市が現場監視 きょう住民説明会

今月14日に発生した地滑り現場(中央)。3年前の発生現場の斜面補強工事(上方)はほぼ終了していた=南島原市南有馬町(南島原市提供)

 長崎県南島原市南有馬町大抜地区で14日朝に発生した地滑りから10日。市は付近の2世帯5人に高齢者等避難情報を発令し、県と共に現場の監視を続けている。現場は傾斜地が多い標高約200~250メートルの中山間地域。大雨が降ればさらなる被害も懸念される。梅雨入りを控え住民から不安の声も上がっており、県と市は24日夜に説明会を開く。
 市防災課によると、14日午前8時過ぎ、大抜地区の住民から「樹木が折れるような音が聞こえる」と通報があった。調査の結果、幅100メートル、長さ200メートルの地滑りを確認した。周辺の民家に被害はなかった。
 市は同日、警戒レベル3の「高齢者等避難情報」を発令。今後専門家と協議し、レベル4の「避難指示」に切り替える可能性もあるという。
 近くで農業を営む60代女性は「雨音が怖くて眠れない夜もある。おちおち仕事も手に付かない」と不安を隠さない。
 今回の地滑り現場のすぐ上方に位置する夏吉地区では、2021年8月の大雨で幅60メートル、長さ125メートルの地滑りが発生していた。市は当時、2423世帯4870人に避難指示を出した。
 夏吉地区は今回の地滑り現場とともに林野庁が管轄する「大抜地区地滑り防止区域」に含まれる。産学官の技術者らでつくる長崎地盤研究会(会長・蒋宇静(じゃんいじん)長崎大学教授)は3年前の地滑りについて報告書をまとめている。
 報告書によると、夏吉地区の地滑り現場は、山の斜面が崩落してたまった「崩積土」が、砂岩や泥岩の上に交互に重なっていて地盤が弱い。大雨で地層に雨水が浸透し、強度が急激に低下した地盤が動き出して地滑りや崩落が起きたという。
 今回の地滑り現場では二次災害の恐れがあるため、県と市は梅雨明けを待って本格的な調査や復旧工事に乗り出す方針。24日午後7時から口之津町の口之津公民館で住民説明会を開く。
 長崎地盤研究会の杉本知史長崎大学准教授は「土砂災害は地質構造や地下水の流れ方など、地中の見えないところで起こる現象に起因する」と指摘。「いつどこで災害が発生するのか予見するのは難しい。平時から防災マップや自治体のホームページで危険な箇所を認識しておくことが必要だ」と話している。

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