鬼怒川で発見のイルカ化石は新属新種 県内初「重要な資料」 11月まで県立博物館で展示

新属新種と分かった原始的なヨウスコウカワイルカの化石。右が鬼怒川で見つかったもの=24日午後、宇都宮市睦町

 宇都宮市岡本地区の鬼怒川と群馬県安中市の碓氷川で発見されたイルカの頭部の化石は、アジア初となる新属新種の原始的なヨウスコウカワイルカ科だったことが24日までに群馬県立自然史博物館の研究で分かった。鬼怒川の化石は頭の大部分が残っていたことから、新属新種発見の決め手となった。県内で新種のイルカの化石が見つかるのは初めてで、進化や分布を研究する上で重要な資料として注目されている。県立博物館は11月4日まで、特設コーナーで化石を展示している。

 鬼怒川の化石は2012年、当時中学3年生だった浜田幸典(はまだゆきのり)さんが発見。同館も発掘調査に携わった。

 1999年に発見された群馬県の化石とともに同県立自然史博物館学芸員の木村敏之(きむらとしゆき)さん、名誉館長の長谷川善和(はせがわよしかず)さんが研究を進めていた。その結果、くちばしの骨の付け根がくびれており、鼻付近の骨の形状が他と比べて顕著に小さい特徴から、新属新種と判明した。

 鬼怒川の化石は約1千万年前のものとされ、学名「エオリポテス ジャポニクス」と命名するための基準となる模式標本になった。群馬県の化石は、同科の化石で世界最古の約1100万年前のものという。

 同科は淡水に生息するのが特徴。原始的なヨウスコウカワイルカの化石はこれまで、米国やメキシコでの報告例があった。今回の化石は海水環境に生息していたと考えられ、ヨウスコウカワイルカの仲間が海から淡水環境へどのように適応したのかなど進化の研究につながると期待されている。

 研究成果は日本古生物学会の学術雑誌に掲載。浜田さんは同博物館を通じて「新種として報告されて大変うれしい」とコメントを寄せた。

 同館学芸員の河野重範(かわのしげのり)さん(43)は「県内で発見された貴重な資料。夏休みなどに足を運んでいただき、自由研究の参考にしてほしい」と話した。

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