大の里、最速初優勝 所要7場所、県勢25年ぶり

  ●夏場所12勝 殊勲賞、技能賞も獲得

 大相撲夏場所(両国国技館)千秋楽の26日、単独トップで迎えた新小結大の里(本名中村泰輝、津幡町出身、二所ノ関部屋)が関脇阿炎を押し出し、12勝3敗で初優勝を果たした。初土俵から所要7場所での制覇は、幕下付け出しデビューでは横綱輪島(七尾市出身)の15場所を大幅に上回り、先場所の尊富士の10場所も更新して史上最速。大の里は能登半島地震の被災地を思い「優勝する姿を、石川の人たちに見せられ、本当にうれしい」と涙を拭った。

 石川県出身力士の優勝は輪島、出島(金沢市出身)に次ぐ3人目で、1999年名古屋場所の出島以来、25年ぶりの快挙となった。新三役での優勝は1957年夏場所の安念山以来で67年ぶり。

 初の殊勲賞と2度目の技能賞にも輝いた。新入幕から3場所連続の三賞受賞は千代天山以来で25年ぶりとなり記録ずくめの初優勝となった。

 千秋楽は大の里が本割で敗れれば、4人による優勝決定戦にもつれる可能性があった。大の里は阿炎のもろ手突きをこらえると右をのぞかせ、左おっつけで一気に押し出し。力強く賜杯をつかんだ。

 2年連続アマチュア横綱などのタイトルを引っさげ、昨年5月の夏場所でデビュー。所要2場所で新十両、4場所で新入幕を果たし、6場所で新三役に昇進する快進撃を続けてきた。

 新入幕から3場所連続で11勝以上をマークし、新三役で自己最多の12勝を挙げ、大関昇進の起点を作った。八角理事長(元横綱北勝海)は「1年後にはもっと上に行っているかもしれない。それを感じさせる内容だ」と大関すらも通過点とみる。

 千秋楽は津幡町後援会から贈られた「火牛(かぎゅう)の計」をモチーフにした化粧まわしを着用し、地元への思いをにじませた。石川から多くの応援が届いていたとし「本当にたくさんの方が見てくれたと思う。優勝という形で終われて良かった」と笑顔を見せた。

 名古屋場所は7月14日に愛知・ドルフィンズアリーナで始まり、新関脇として活躍を誓う。6月2日に金沢市のホテル日航金沢で新三役昇進祝賀会が予定されており、地元で初優勝を祝う凱旋(がいせん)の場となる。

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