「バス愛」あふれる14歳、3年がかりで模型自作 広告や機器類…細部まで精緻に 全但バス社長と念願の面会

段ボールで作った全但バスの模型を、村上宣人社長(左)に説明する足立陸弥さん=豊岡聴覚特別支援学校

 クリーム地にオレンジと緑のラインで知られる「全但バス」を愛してやまない生徒が、豊岡聴覚特別支援学校(兵庫県豊岡市三坂町)にいる。中学部3年生の足立陸弥さん(14)だ。3歳からバスが好きで、気づけば地元の全但バスのとりこに。車両を観察し続け、外観と内装を細部まで再現した模型を3年がかりで製作した。そんな話を聞きつけた男性が今月10日、同校に足立さんを訪ねた。「全但バス社長の村上宣人です」(丸山桃奈) ### ■観察眼に社長驚がく

 「好きなことは、全但バスに乗車すること」。足立さんはそう書いた手作りの名刺を、憧れの会社のトップである村上社長に手渡した。社長は感謝を伝え、自社の記念誌などを贈った。

 足立さんはこの日、中学部1年の春から製作してきた段ボール製のバスをお披露目した。模型は長さ60センチ、幅40センチ、高さ40センチ。電光表示板や車体広告、車いすのマークなどを忠実に再現したほか、車内の蛍光灯が光り、ドアは開閉して、車いすを昇降させるリフトも出し入れできる。

 模型の車内には、運転席に並ぶ機器や客席の非常用停止ボタンなども。精緻な模型に仕上げた観察眼に、社長は目を丸くした。足立さんが停留所ごとの整理券の番号をまとめた手書きの資料などを次々と紹介すると、社長は「どこでこれを…」と、言葉を継ぐのが精いっぱいだった。 ### ■「マニアックすぎ」教諭もたじろぐ

 「全但バスはノンステップバスで乗りやすく、いいにおい」と足立さん。平日は敷地内の寄宿舎で過ごしており、土日曜をバス観察に充てる。乗ったり見に行ったりして撮影した写真をもとに特徴を細かく書きとめる。車両ごとに性能などが少しずつ異なるため、模型は「いいところを1台に詰め込んだ」という。

 これまで級友と全但バスの話題で盛り上がることはなかった。念願の面会がかなった村上社長に「なぜ、車両はいすゞの『エルガミオ』が多いのですか」「整理券の紙はどこで買えますか」「車内アナウンスの声は誰ですか」などと、聞きたかった質問をぶつけた。

 「ナンバープレートの数字は、なぜ語呂合わせが多いのですか」「バス車内に香料を使っていますか」。想像を超える質問に「変な汗が出てきた」と村上社長。たじろいだのは、足立さんの手話通訳を担う教諭もだ。「マニアックすぎて手話が難しいよ。ついていけん」 ### ■新車の知らせ、尋ねた質問は

 今回の面会は、中学部2年の時に足立さんがコープデイズ豊岡(同市加広町)で実習したことが端緒となった。足立さんのかばんに全但バスの車両がデザインされていることに江原大輔副店長が気づき、本人に経緯などを深掘り。模型の製作を聞き及び、来店者に見てもらおうと店内で1カ月半展示した。全但バスも足立さんの存在をコープ側から伝えられて、知るところとなった。

 「7月に(路線バスの)新車が納車されるので、ぜひ見学しにきてください」という村上社長の言葉に、足立さんは喜びを爆発。そして目を輝かせて言った。「ナンバーはもう決まっていますか」。これからの夢は、自宅に本物の車両を置くこと。「全但バス愛」は広がるばかりだ。

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