続柄「夫」

 4階の総務部でさっき見せてもらった健康保険と国民年金の「被扶養者届」には、配偶者の続柄の欄に「夫(未届)」「妻(未届)」という選択肢がある。婚姻届を提出していない「事実婚」カップルのための記載だ▲男女間の事実婚・内縁関係には一定の法律的な効果がある。関係の解消時には離婚する夫婦と同じように財産分与が主張できるし、どちらかが一方的に関係を破棄すると慰謝料を請求される可能性もある。その関係を公的に証明する方法の一つが住民票の続柄記載だ▲さて、婚姻届を「出さない」内縁の2人と、今の制度下で「出せない」同性の2人。ほんの数文字の違いだ。もしも取り扱いが区別されるとしたら、その理由は合理的に説明できるだろうか▲窓口の担当者もそう考えたのかもしれない。男性カップルの住民票に「夫(未届)」との記載を認めた大村市の対応が話題を呼んでいる▲同性婚を巡る議論に一石を投じる-そんな意図があったかどうかは定かではない。しかし、投げられた石のサイズは当事者の笑顔が何より物語っている。他の自治体への波及や総務省の見解が注目される▲ふっと思い出した短歌が一首。〈幸せにならなきゃだめだ/誰一人残すことなく省くことなく〉加藤千恵。若い歌人のシンプルな正義感がまぶしい。(智)

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