多彩な表情を見せる神秘の花・ハスを巡る旅の集大成。渡辺眸写真集『LOTUS [ロータス]』

By CAPA編集部

渡辺眸さんの写真集『LOTUS [ロータス]』が発売された。

渡辺さんは1960年代後半から写真を始めた。縁日で店を開くテキヤの世界に入り込み、学生運動では東大安田講堂内の日々を記録した。1972年からはアジアへの旅に出る。

ハスが被写体になったのは、宇佐神宮で原始ハスに出会ったことだという。これまで記憶の底に沈んでいた光景や経験が浮かび上がり、ハスを巡る旅へと渡辺さんを突き動かした。可憐な装いだけではなく毒々しい表情も持ち、実に神秘的な題材と感じる。

渡辺 眸『LOTUS [ロータス]』

体裁 B5判変型・92ページ
価格 3,960円(税込)
発売日 2024年4月6日
発行 新泉社

渡辺 眸 (Hitomi Watanabe)

東京都⽣まれ。明治⼤学を卒業後、東京総合写真専⾨学校で写真を学びカメラマンの道へ進む。写真学校の学⽣時代には、屋台で働く⾹具師の世界を3年にわたり撮影し、卒業時の制作展で「⾹具師の世界」として発表。その後、東⼤安⽥講堂事件や新宿の学⽣運動など1960年代の社会運動の現場を記録。特に東⼤安⽥講堂事件では唯⼀撮影を許された写真家としてバリケード内に留まり、東⼤全共闘と活動を共にしながら1969年1⽉の安⽥講堂攻防戦、⼤学内での集会やデモを含め、同年9⽉までの闘争の⽇々を撮影しつづける。1972年、アジアに旅⽴つ。なかでもインドやネパールの⾵⼟と⽂化に惹かれ、魂の源郷と感じ滞在する。以後、アジア諸国の旅をつづけるなかで作品を発表。1983年、インド・ネパールでの魂の軌跡をまとめた写真集『天竺』を刊⾏し評価をうける。主な写真集に『天竺』『猿年紀』『西方神話』『てつがくのさる』『東大全共闘1968-1969』『1968 新宿』『TEKIYA香具師』など。パブリックコレクションとして東京都写真美術館、パーソナルコレクション多数。

〈文〉市井康延

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