「まるでビデオゲームみたいだ」無名右腕の13者連続奪三振のMLB記録樹立を呼び込んだ魔球“チッター”<SLUGGER>

5月29日(現地)、つい最近までまったく無名だった25歳の投手が、これまで誰も成し遂げたことのない偉業を達成した。

男の名はジェレマイア・エストラーダ(パドレス)。メジャー3年目の右腕はこの日のマーリンズ戦でヘスス・サンチェス、ジェイク・バーガー、ニック・ゴードンを三者連続空振り三振に仕留め、「13者連続奪三振」のMLB新記録を打ち立てた。

厳密にいうと、この記録には「1961年以降」という但し書きがつく。それ以前の時代は試合の詳細データが残っていないため、達成者がいたかどうか証明のしようがないからだ。とはいえ、昔は三振数自体が今とは比較にならないほど少なかったことを考えると、エストラーダの記録が「1961年以降」にとどまらず、長いメジャーリーグの歴史で最多である可能性は極めて高い。

2017年にドラフト6巡目指名でカブスに入団したエストラーダは22年8月にメジャーデビュー。だが、目立った成績は残すことができず、昨季は3Aでも28.2回で26もの四球を与えるなど大荒れだった。

だが、そこに“ダイヤの原石”を見出したパドレスが昨年11月にウェーバーで獲得した。ルーベン・ニーブラ投手コーチは「球威は十分。あとは(ストライク)ゾーンの中でどれだけ安定できるか」と才能を高く買い、「チャンスはあるぞ」とエストラーダを励まし続けた。 新天地で開幕ロースターに入り、韓国でのオープニング・ゲームにも登板したが、すぐマイナーに降格。約1ヵ月後に再昇格してから、エストラーダの快進撃が始まった。

平均約97マイルの4シームとスライダー、そして本人が“チッター”と呼ぶスプリット・サークルチェンジで相手打者を蹂躙。23日から始まった13者連続三振はすべて空振りで奪う圧倒ぶりで、“犠牲者”の中にはアーロン・ジャッジ、ジャンカルロ・スタントン(ともにヤンキース)ら球界屈指のスラッガーも含まれる。

文字通り彗星のように現れた右腕の活躍に、記録を達成された方のマーリンズの主砲ジョシュ・ベルが思わず「パドレスはどうやってあいつを獲得したんだ?」と記者たちに尋ねたというから、AJ・プレラーGMも笑いが止まらないだろう。

何より、本人も「まるでビデオゲームをプレーしているみたいだ」と自身の快投を信じられない様子。今季から新加入の松井裕樹、元阪神のロベルト・スアレスが好投を続けるパドレスのブルペンは、今後ますます強力になりそうだ。

構成●SLUGGER編集部

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