調理や保管を間違えると毒になる…!危険な食べ物・飲み物7つ。重症化しやすい乳幼児は、とくにここに注意して!【管理栄養士】

引用元:Helin Loik-Tomson/gettyimages

これから梅雨、そして夏がやってきます。気温や湿度の上昇によって細菌が繁殖しやすくなる梅雨~夏場は、食中毒が起こりやすい季節です。食中毒の予防の原則は菌を「つけない」「増やさない」「やっつける」ことですが、実は食中毒は、食材自体の毒素や誤った管理方法などでも起こることがあり、これは1年を通して注意が必要です。
子育て支援施設でスイセンをニラと間違って調理したことによる食中毒が起こった(スイセンにはヒガンバナアルカイドという毒がある)と報道されたこともあります。
離乳食や幼児食にも使用する身近な食材の危険について、子どもの食に詳しい管理栄養士の太田百合子先生に聞きました。

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食中毒の危険性がある食材は?

離乳食や幼児食によく使用する食材の中にも、食中毒の可能性があるものがあります。食材についての正しい知識を持つことも予防に役立ちます。気をつけたい食材や食中毒の予防方法などについて太田先生に教えてもらいました。

【じゃがいも】芽と緑色部分にソラニンという毒素が

じゃがいもの芽に毒素があることは知られていますが、保管方法によってはさらに毒素が増えてしまうこともあるそうです。

「じゃがいもには、“グリコアルカロイド”という天然の毒素のうち、主にソラニンやチャコニンと呼ばれる物質が含まれています。これらの毒素は芽や皮の部分で増えやすく、とくに長時間にわたり太陽や蛍光灯の光が当たって表面が緑色になった皮部分はソラニンを多く含みます。毒素を多く含むじゃがいもを食べると、吐きけや嘔吐、下痢、腹痛等の消化器症状、頭痛、めまいなどの症状が出ることがあります。乳幼児では嘔吐や下痢、機嫌が悪くなるなどで現れるでしょう。

ソラニンやチャコニンは加熱しても減らないので、調理前に芽を取り除き、緑色の皮部分は厚めにむいて必ず取り除きましょう。保存の際は光が当たらないよう新聞紙などに包んで。じゃがいもは冷蔵庫で冷やしすぎるとでんぷんが低温障害を起こしていたみやすくなるので基本的には常温保存ですが、冷蔵庫の野菜室での保管もOK。離乳食や幼児食に使いやすい食材ですが、子どもに食べさせるときはできるだけ早く使うようにしましょう」(太田先生)

【卵】ヒビが入っているものはサルモネラ菌の汚染に注意

しっかり加熱した卵は離乳初期から食べさせることができます。賞味期限は2週間ほどと肉や魚よりも長もちする卵ですが、保管方法によって菌が繁殖しないように注意する必要があります。

「日本のスーパーで市販されている卵の多くは殺菌消毒がされ、流通段階での温度管理も徹底されているので、サルモネラ菌による汚染はそれほど心配ないといわれています。ただ、ヒビが入ったり割れてしまうと、汚染の可能性があるため注意が必要です。ヒビが入った卵を見つけたら、必ず加熱して大人が食べ、子どもには与えないようにしましょう。

冷蔵庫保管の際には、買ってきたパックのまま保管するほうがいいでしょう。パックから出して卵ケースなどに保管すると、ヒビが入っている卵から庫内に菌がまん延する可能性があるためです。また、水洗いは逆に卵の殻の微細な穴から細菌が入り込む危険性が。日本で売られている卵は洗わないほうが危険が少ないといわれています」(太田先生)

卵は離乳期には加熱し食べさせるのが基本です。そして、生卵を食べるのは3才を過ぎてからが安心だと太田先生は言います。

「日本には卵かけごはんという食文化もありますが、厚生労働省は『2才以下の乳幼児は生卵を避ける』(※)としています。3才を過ぎてから初めて生卵を与えるときは、買ってきてすぐの新鮮なものを少量から試してみるようにしましょう」(太田先生)

【魚】管理方法などによりヒスタミン中毒を引き起こすことも

まぐろ、かつお、ぶり、さば、さんま、などの魚は、時間がたって傷むときや不適切な管理(一度解凍したものを再冷凍する)などによって「ヒスタミン」という物質が産生されます。このヒスタミンが増加した魚を食べると、じんましんや嘔吐・下痢などのアレルギー症状に似たヒスタミン中毒を発症することがあります。

「ヒスタミン中毒の症状には、耳や口のあたりが赤くなる、口のまわりにじんましんのようなものができることや、腹痛、下痢、嘔吐などがあります。予防には、新鮮な魚を買うこと、買ったら速やかに冷蔵・冷凍保存し、常温での放置時間を最小限にすることが大事です。一度蓄積されたヒスタミンは加熱しても分解されません。ひと口食べて唇や舌先がピリピリした刺激を感じたら、食べずに処分しましょう。離乳食で魚を食べさせるときにはママやパパが味見をしてから食べさせるといいでしょう」(太田先生)

【はちみつ】乳児ボツリヌス症になることも。1才未満には与えないで

はちみつにはボツリヌス菌が含まれていることがあるため1才未満の乳児には与えないよう、母子健康手帳やはちみつの商品ラベルにも注意喚起の記載があります。

「はちみつに含まれるボツリヌス菌の芽胞(がほう・菌の種のようなもの)が赤ちゃんの腸に侵入すると、成長して増殖し毒素を出し、全身に広がって乳児ボツリヌス症を発症し、便秘などの症状が現れます。病院できちんと治療すれば後遺症もなく完治することが多いですが、重症化すると呼吸困難や呼吸停止にいたることも。

ボツリヌス菌の芽胞は加熱しても死滅しないので、1才未満の赤ちゃんの離乳食やおやつにははちみつを使用しないでください。市販の飲料やお菓子などにもはちみつが含まれていないかよく表示をチェックしましょう。ただ、母乳には影響しないので、授乳中のママがはちみつを食べても問題はありません」(太田先生)

【ぎんなん】誤えんの危険もあるため離乳期にはNG!

大人でも食べすぎると下痢をすることがあるぎんなん。赤ちゃんに与えるのはNGです。

「ぎんなんは毒素が含まれるため、食べすぎるとおう吐やけいれんなどの中毒症状を起こすことがあります。この毒素は加熱しても消失しません。離乳期には誤えん窒息事故の危険性もあるため与えないこと。3才を過ぎてから子どもに食べさせるなら、茶碗蒸しに入っている1個くらいなら大丈夫でしょう」(太田先生)

【カレーやシチュー】とろみで繁殖するウェルシュ菌に注意

幼児期の子どもが好きなカレーやシチューなどのとろみのある煮込み料理は、ウェルシュ菌による汚染に注意が必要だそうです。

「ウェルシュ菌は土や水の中など自然界に生息する細菌で、汚染された肉類や魚介類を使った煮込み料理で増殖しやすいといわれます。中毒症状は水様性の下痢・腹痛などです。
酸素(空気)がないところを好むため、カレーやシチューのようなとろみのあるメニューで増えやすい細菌です。ウェルシュ菌の芽胞は一度増殖すると通常の加熱では死滅しないので、増殖を防ぐことが大事です。

3才を過ぎたころになると、前の日に作ったカレーなどを食べさせることも出てくるかもしれません。
保存する際は、できるだけ早く粗熱を取って冷蔵庫で保存し、再加熱する際にはよくかき混ぜながら食材の中心部までしっかり加熱することが大切です」(太田先生)

お話・監修/太田百合子先生

取材・文/早川奈緒子、たまひよONLINE編集部

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暑くなるこれからの季節はとくに、麦茶などの水分補給にも注意が必要だと太田先生は言います。
「マグなどに麦茶を入れて一度口をつけたものは、マグの中の飲み物に唾液が混じり菌が増殖しやすく、とくに夏場の炎天下の公園や車内に長時間放置するのは危険です」(太田先生)
水分補給はその時に飲む量だけを水筒からマグなどにうつして飲ませるようにしましょう。

●記事の内容は2024年5月の情報であり、現在と異なる場合があります。

※「卵によるサルモネラ食中毒の発生防止について」

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