入院患者虐待発覚から4年、神出病院院長が会見で初めて謝罪 独裁防ぐ新体制「院内の雰囲気は一変した」

事件後初めての会見を開き、謝罪する神出病院の土居正典院長(中央)ら=30日午後、神戸市中央区

 2020年に看護師ら6人が入院患者を虐待して逮捕される事件が起きた神戸市西区の精神科病院「神出病院」が30日、神戸市内で記者会見を開き、土居正典院長が事件について改めて謝罪した。事件発覚から4年以上が経過して初めてという異例の会見で、これまでの再発防止の取り組みなどを説明した。

 事件は20年3月に発覚。看護師ら6人が患者同士を無理やりキスをさせたり、ホースやバケツで水をかけたりしたなどとして、準強制わいせつ容疑などで逮捕され、全員が有罪判決を受けた。後の第三者委員会の調査では少なくとも職員27人が84件の虐待をしていたと報告された。

 会見では21年6月に就任した土居院長が冒頭、「患者さま、ご家族さま、関係者に多大なご迷惑とご心配をおかけし、大変申し訳ありません」と謝罪。長期間会見を開かなかった理由を「神戸市の改善命令や第三者委員会の意見を受けて改革を進めてきた。新体制発足後3年が経過し、ある程度の環境が整った」と釈明した。

 土居院長らは事件について「当時の院長による専制態勢が10年以上続く中で、職員自身が『患者のために』と考えるのをやめていた」と総括。独裁を防ぐための組織構造にし、職員研修やチーム医療の徹底、設備・環境の改善などを図ったと紹介した。

 土居院長は「院内の雰囲気は一変した。精神科病院の虐待事件が全国で相次ぐ中、取り組みが参考になってほしい」と話した。

 一方、事件当時の運営法人理事長だった籔本雅巳氏のコメントを初めて発表。第三者委は8年間で約18億円という籔本氏の高額報酬などを問題視し、一部を「返還請求すべき」と指摘していた。籔本氏は「監督が行き届いていなかったことは責任を感じている。しかるべき時が来た時には必ず資金援助を行う」とし、病院側も「自主返納」を待つ姿勢を示した。(前川茂之)

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