アップルとOpenAI、「iOS 18にChatGPT搭載」で合意か。マイクロソフトは懸念との噂

Image:Meir Chaimowitz/Shutterstock.com

アップルが次期iOS 18にChatGPTの技術を組み込むため、OpenAIと交渉しているとの噂は何度となく報じられてきた。その交渉は2023年半ばから始まっており、協力関係は音声アシスタントSiriの改良にも及んでいること。そしてマイクロソフトもOpenAIに依存しているため、両社の協力を懸念していると報じられている。

独自の情報源を持つニュースメディアThe Informationは、OpenAIのサム・アルトマンCEOがアップルとのライセンス契約を締結し、長年の目標を達成したと伝えている。数週間前にBloombergが「合意間近」だと報じていたが、それがついに実現したという流れである。

このライセンス契約は、6月10日(現地時間)からの年次開発者会議WWDCにて、世界に向けて発表される予定とのこと。iOS 18にはAIベースの新機能が追加されると言われてきたが、OpenAIはその一部で大きな役割を果たすことになる見通しだ。

The Informationの報道は、ちょうど1年前に遡る。まさに昨年のWWDCの頃、アップルの機械学習チームはアルトマンやOpenAIの他のメンバーと会談。その場で何を話し合ったかは謎に包まれているが、その後アップル側が社内テストのためにOpenAIのAPIにアクセス可能とすることで合意に達したという。

これらのテストでは、アップルのエンジニアはChatGPTをSiriに接続し、複雑なクエリを処理する印象的なデモンストレーションを作成したとのこと。実際、iOS 17.4ベータからはChatGPT APIを呼び出す「SiriSummarization」フレームワークが見つかっていたが、両社の協力関係がなければあり得ないだろう。

アップルは、Siriに複雑な質問に答えさせたり、チャットボット化することに力を注いでいるという。OpenAIは自社のAPIを使うことで、Siriの反応を改善したり、自然に話したり、さらにリアルタイムの翻訳もできることを示したと伝えている。

一方でアップルは、Siriの応答はChatGPTが生成しているとユーザーに明確に示したいと考えているとのことだ。すでに知名度・信頼性ともに高い、OpenAIのブランドを有効に活用する意図かもしれない。

その一方で、マイクロソフトはアップルとOpenAIの提携を懸念しているという。なぜなら同社もOpenAIと契約を結び、OpenAIはCopilotの技術を提供する一方、マイクロソフトはOpenAIに自社のデータセンターを使わせてChatGPTを駆動しているからだ。

アルトマン氏は最近、マイクロソフトのサティア・ナデラCEOと会い、こうした懸念につき話し合ったとのこと。

その内容は、たとえばiPhoneやiPadユーザー向けに新機能を発表した際のサーバー需要の高まりをどうするかということ。先日Bloombergも、OpenAIが2024年内に殺到するアップル製品ユーザーに対応すべくサーバー能力の確保に奔走していると報じていた

またマイクロソフトは、OpenAIに130億ドルを投資する見返りとして、将来の利益の取り分をカットするよう求めたとも伝えている。

おりしもマイクロソフトは、ハードウェアレベルでAIを深く統合する「Copilot+PC」構想を打ち出したばかりだ。アップルもiOS 18/iPadOS 18にOpenAIの技術を組み込めば、両社は同じOpenAIの技術を使いながら競合することになる。

さらにアップルはOpenAIとの交渉を進めていたのと同時期に、iOS 18にGeminiを使うことをGoogleと協議していたとのこと。これも複数のメディアが何度か報じてきた話だが、WWDC直前まで交渉は続きそうだ。

こうした他社との契約にもかかわらず、アップルはテキストの要約など、より単純なタスクをオフラインで処理できる独自の言語モデルにも取り組んでいるという。

これもWWDCで発表される見通しだが、まず「ベータ版プレビュー」と銘打つ可能性がある……とは、同社の内情に詳しいMark Gurman記者も述べていたこと。アップルが生成AIで一人歩きできるには、数年単位の時間がかかるのかもしれない。

© 株式会社 音元出版