イーロン・マスク vs MetaのAI部門トップ。AI開発をめぐりXで口げんか

Image:Angga Budhiyanto/Shutterstock

これまでX(旧Twitter)は、万人に好評とは言えない仕様変更をしてきたものの、いまだに深刻なユーザー離れが起きていないのは、ときおり起こる億万長者たちの騒ぎも少なからず貢献しているのだろう。特にオーナーであるイーロン・マスク氏は、テスラの株価に責任ある立場ながらも議論にさかんに “参戦” してきた。

その最新トピックとして、マスク氏がMetaのAI部門トップを務めるヤン・ルカン氏と議論とも言えない口論を繰り広げている。

ことの発端は、マスク氏がxAIへの求人を募る投稿である。これに対してルカン氏は、マスク氏が「真実の最大限の厳密な追求」を望んでいると言いながら、自らのSNSでは「クレイジーな陰謀論をまき散らしている」と反応。

さらにマスク氏による「AIは全員の命を奪う」(と言いながらxAIを開発)「xAIの抱えている問題は、来年には解決する」などの主張を嘲るように列挙。「彼の車、ロケット、ソーラーパネル、衛星ネットワークは好きだ。私は彼の復讐政治、陰謀論、誇大広告が大嫌いだ」とも付け加えている。

これには続きがある。なぜ自分でAI会社を立ち上げようとしないのかフォロワーに問われたルカン氏は「私は科学者で、ビジネスや製品の人間ではない」と反論。そこにマスク氏が「命令に従ってるだけだ」と横やりを入れると、ルカン氏は「あなたは研究の仕組みを理解していないようだ」と応じている

マスク氏は、ルカン氏が最近行った「科学」とは何かと質問。すぐさま「2022年1月以降に発表された80以上の技術論文」が掲載されたGoogle Scholarページへのリンクを貼った上で「あなたはどうだい?」と返されるや「なんてことはない。もっと頑張れ!」という応酬が見どころだろう。

この戦いがタダで見られたことに感動する投稿に対し、ルカン氏は「休日のお遊びだ」と発言。だが、Metaの一員として、マスク氏に思うところはあったのかもしれない。

最近のマスク氏は、Metaの製品やサービスに対して攻撃をくり出していた。たとえば先週末、同氏はメッセージの暗号化で知られるWhatsAppが「毎晩ユーザーデータをエクスポートしている」と投稿。これにWhatsAppの責任者は「これは間違いだ」「我々はセキュリティを重視している」と反論している。

AI開発プラットフォームHugging Faceのクレム・デランゲCEOは、「毎日のように」マスクよりもルカン氏を支持すると発言。同氏が起業家のように研究を現金化することなく、AIコミュニティに多大な貢献をしてきたと指摘している

マスク氏とMetaのザッカーバーグCEOとの金網デスマッチは実現しなかったが、今後もX上での舌戦は無料で観戦できる状況が続きそうだ。

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