全仏オープン、選手らの相次ぐ苦言に観客席での飲酒を禁止。ファンの迷惑行為に歯止め

大会ディレクターのモウレスモ「踏み込んではいけないステップがある」

現在開催中の「全仏オープン」(フランス・パリ)の大会ディレクターを務める元女子世界ランク1位のアメリ・モウレスモ氏は、スタンドでのアルコール類の持ち込みを禁止すると発表。「行き過ぎた行為」は退場させられる可能性があるとした。

全仏オープンを訪れるテニスファンは熱狂的で知られ、特に地元フランス選手への声援は対戦する選手にとってはプレッシャーを感じることもあるだろう。だが、それが行き過ぎることもあり、ラリー中の叫び声やポイント間の応援、ブーイングも止まない時がしばしば見受けられる。

現地28日に行われた全仏オープン男子シングルス1回戦では、ダビド・ゴファン(ベルギー/同115位)が地元フランスのジョバンニ・ムペシ・ペリカール(同66位)との試合後に「3時間半も侮辱され続けたら少しは彼らをからかわなければいけないだろう」とコメント。マナーの悪い観客がいると非難し、「本当に失礼。騒ぎたいだけの人がいる。誰かが僕にガムを吐いた」と度を超えたものだったとした。

それを受けてか、大会は会場周辺のコンコースなどで飲酒はできるものの、座席での飲酒を禁止する取り組みをスタート。モウレスモ氏は、「今まではスタンドでのアルコールが許されていたが禁止する。もし誰かがこれを破ったり、マナーを守らなかったり、選手にものを投げつけたりしたらそれだけで退場とする」と述べ、現在ゴファンにガムを吐いた人物を探しているという。

地元ファンの洗礼を浴びたゴファンは、観客のマナーを批判したことで多くの選手、コーチらからの支持があったことを明かし、「一番大切なのは好きな選手を応援すること。でも、嫌いな選手に対して罵声を浴びせるのはファンのモラルに反すると思う」とテニスファンのあるべき姿を語った。

また、2回戦で大坂なおみ(フリー/女子同134位)を下した2連覇中の女王、イガ・シフィオンテク(ポーランド/同1位)は、試合後のオンコートインタビューで「大きなプレッシャーの中でラリーの最中に叫ばれると集中するのが難しくなる」とも試合中のマナーに言及。

これについてもモウレスモ氏は、「観客がテニスを見て、試合の一部になることで感情を露わにして熱狂的になることをとてもうれしく思っている」とする一方で、「それ以上踏み込んではいけないステップがあるのも確か。審判は選手と試合へのリスペクトを高めるために厳しくなる。この問題において審判はかなり重要な役割を担っている」と、試合進行の妨げになるような行為にも対応。ファンの声援がヒートアップしそうな試合では経験豊富な審判を選ぶこともあるとした。

これらについてファンの厳しい声に悩まされ、観客とも口論するときもあるジョコビッチは、「サッカーやバスケットボールとは違うけど、選手としてはいい雰囲気を求めるものだよね。僕もその雰囲気を味わいたい。ファンが選手や国のために応援したり、歌を歌ったりするのをね」と、観客の権利だとし“スポーツの一部”とする。それでも「一線を越えて選手へ失礼なことをするのは微妙なラインだ。ゴファンの反応は理解できるし、軽蔑し罵声を浴びせる人たちに立ち上がる選手を支持するよ」と今回のゴファンの言い分にも理解を示した。

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