STANLEY牧野任祐、SF初優勝で迎えるGT鈴鹿戦と改めて振り返る苦労「肩の荷がちょっと降りた」

 2週間前のスーパーフォーミュラ(SF)第2戦オートポリスで参戦6年目にてして初優勝飾った牧野任祐。その余韻を持ったまま迎える今週末のスーパーGT第3戦鈴鹿はどのような心境で臨むのか。初優勝のその後を聞くとともに、ターニングポイントとなった昨年について振り返る。

「もちろん、病んでいましたね」

 これは、昨年のSF最終戦鈴鹿でチームメイトの太田格之進がルーキーイヤーで初優勝を飾った後のことを振り返った、牧野任祐の感想だ。昨年、SF参戦5年目の牧野は、新人の太田に先を越されてしまったのだ。

「その後にGTのレースがあったので、ちょっと気持ちを切り替えることができたのですけど、もしSFのあのレースがシーズン最後のレースだったら、当分、病んでいたと思います。もちろん格之進がいい走りをして優勝したのはチームとしてもいいことですし、格之進の実力なので、そこは本当に素晴らしいなと思うのですけど、僕自身としてはメチャクチャ悔しかった。シーズン中盤から良くなってきていた中で、富士で優勝を逃して、その後に大きなクラッシュをしてと、自分の不甲斐なさを感じていたので、トータルで考えても、例年になく悔しいシーズンだったなと思います」

 このSF最終戦の件だけでなく、2023年は牧野にとって大きなターニングポイントになった。SFのシーズン半ばではトラブルが続いてまともなレースができず、チームと感情的に言い合うこともあった。

「この年齢で言ってはいけないようなことも言って、チームと言い合いのような感じになって、言うだけ言ったじゃないですけど、スッキリするくらい言うことができたので、結構、振り切ることができたかなと。そこからまた一段とチームと密にコミュニケーションを取って、ステップを踏むことができた」と、その時を振り返る牧野。

 GTではチームメイトで先輩でもある山本尚貴が第6戦SUGOで接触を受けてのクラッシュにより、その後のシーズンを欠場。牧野がチームを率いる立場になり、山本の代役を務めることになった新人の木村偉織に細かくアドバイスをするなど、リーダーとして新たな一面を見せることになった。

「(人間的にも大きくなった?)どうなんですかね。自分的にはそこはわからないですけど、側から見ている人がそう思ってくれているのでしたら、ありがたいことですね。ただ、去年は自分の予期せぬ形でしたけど、GTでの自分の立場を含めて、いろいろ環境が変わったなと思います。尚貴さんの大変さもすごくよくわかったし、SFでは最終戦の想いもあるし、あとは大きなクラッシュもして大変なこともありましたし、2位でメチャメチャ悔しいレースもありましたし、人間としていろいろ成長できるタイミングがあったかなと思います」と、今季のSF開幕戦の時に話していた牧野。

 その際にも、今季の目標については「とにかく勝ちたい。その想いだけですね。チャンピオンどうこうよりも、とにかく勝ちたいですね」と話していた。

 そして、ようやく6年目でつかんだスーパーフォーミュラの初優勝。その実感、そして初優勝を経て心境にどのような変化があったのか。スーパーGT搬入日の鈴鹿で尋ねてみた。

「正直、(実感は)あまりないんですよね……オートポリスで勝ってから結構、忙しくて(スーパー耐久第2戦富士)24時間に出る予定だったけど(エンジントラブルの影響で)出れなくなったりとか、オートポリスが終わってからほとんど家に帰っていなくて、(初優勝の余韻を)堪能できているかと言われれば、そうではないですね(苦笑)」

「ちょうど今週の初めに周りのドライバーに祝ってもらったのですけど、改めて、本当に勝てて良かったなと。自分自身、肩の荷がちょっと降りたというか、これまで引っかかっていた部分、自分自身にこれまで足りていなかった部分が明確になったなと言う感じがありますね」

 今週末のスーパーGT第3戦鈴鹿にも、いい雰囲気で臨めるのではないか?

「正直、カテゴリーもやることも違うのでそこまで大きく変わる部分はないかなと思いますけど、気分良くと言いますか、もちろんSFで優勝した流れはあると思いますし、自分自分、今回のGTもすごく楽しみにしている部分があります。この前のオートポリスでは尚貴さんもレースの最初は2番手で、なんなら岩佐(歩夢)も僕の代わりで(テストで100号車に)乗ってもらったので、トップ3でチームクニミツ感が強かった(苦笑)。いずれにしても、自分に取ってすごく大きな1勝でしたし、SFに限らず、このGTに向けてもいい弾みになったのではないかなと思います」

 国内トップフォーミュラでの優勝を経ての最初のレースとなるスーパーGT第3戦鈴鹿、日本のモータースポーツ界で名実ともにトップドライバーとなった牧野はどのようなパフォーマンスを見せるのか。その走りが楽しみだ。

初優勝を遂げ、パルクフェルメでマシンを降りた牧野任祐(DOCOMO TEAM DANDELION RACING) 2024スーパーフォーミュラ第2戦オートポリス
搬入日に斜め止めのピットストップ練習を行うSTANLEY CIVIC TYPE R-GT

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