事件から20年

 「ぞうさん」の歌詞を書いたまど・みちおさんに「ヒマワリ」という詩がある。〈ひとり げらげら/わらってる/まわりを しーんと/させちゃって〉▲あたりは風も絶え、しんと静まり返っている。そんな音のない夏のひとときを、ヒマワリがにぎやかに彩る…。そんな風景を思い浮かべる。「咲」には「わらう」の意味もある。大輪から笑い声が響くようなこの花が咲き誇る頃も遠くない▲頭に浮かぶヒマワリがある。佐世保市内の小学校で、6年生の女児が同級生の命を奪った事件からきょうで20年。亡くなった女の子が好きだったヒマワリは、事件の翌月、一般市民も含めて開かれた「お別れの会」で遺影に手向けられた▲事件当時は佐世保勤務で、取材に携わった身だが、お別れの会といい、学校での追悼集会といい、女の子をしのぶ場にいつもあるその花は「命」を意味するようでもあった▲女の子同士の少しのトラブルがなぜ惨事につながったのか。同級生の心のケアをどうするか。教育者には、地域の大人には何ができるか…。命を巡る「なぜ」や「いかに」が頭で渦巻いたのを思い出す▲子どもが命の大切さを学ぶだけではない。無邪気に笑う“命の花”の日当たりはどうか、水やりはどうかと、きょうは大人があらためて目を凝らす日でもある。

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