ニュージーランドを圧倒したというよりも。気になったのは女子W杯得点王・宮澤ひなたの...【なでしこジャパン/コラム】

2024年5月31日、国際親善試合でニュージーランド代表と対戦したなでしこジャパンが2-0と勝利した。おそらくパリ五輪でも採用するだろう3-4-2-1システムで臨んだなでしこジャパンは、長谷川唯や清水梨紗ら主力をベンチに座らせながらも立ち上がりから主導権を握る展開で快勝したのだ。

縦パスはよく入っていて、ポケットを取るような攻撃も見られた。組み立ての局面で致命的なミスを繰り返すようなこともなかったので、この試合に限れば、チームとして悪くない内容だったと言える。

ただ、なでしこジャパンが圧倒したというよりも、相手のプレスが甘かったとの印象のほうが強い。この日戦ったニュージーランド女子代表は、失礼ながらもSheBelieves Cup で対峙したアメリカ女子代表、ブラジル女子代表と比較するとプレースピード、強度といった面で物足りなさは感じた。

そうした背景があるので、今回の2-0を素直に喜べるかと言えばそうではない。嫌味な書き方をすれば、勝って当たり前の試合に勝っただけとなる。とはいえ、個人に目を向ければ、アピールに成功した選手はいるだろう。例えば、左ウイングバックとして奮闘した北川ひかる、見事なゴールを挙げた古賀塔子、いぶし銀の動きでアシストを決めた清家貴子がそうだ。

気になったのは、清家とともにシャドーを務めた宮澤ひなたのコンディション。昨年のブラジル女子代表との試合で負傷してから代表戦ではなかなか結果を出せていない。この日も持ち前のスピードを有効活用できず、ゴールに絡めなかった。そこまで強さを感じなかったニュージーランド女子代表との対戦で目立たなかったからこそ、気になったのだ。

前回の女子ワールドカップで得点王に輝いた実績もあり、厳しくマークされるのは当然だろう。しかし、そういうプレッシャーを掻い潜り違いを見せつけないとさらなる成長は見込めないのではないか。

一時は不動のレギュラーと考えられていたが、6月3日に開催されるニュージーランド女子代表との2試合目は宮澤にとってパリ五輪への生き残りをかけた戦いになるかもしれない。

文●白鳥和洋(サッカーダイジェストTV編集長)

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