【桧山珠美 あれもこれも言わせて】
5月27日、女性漫才コンビ「今いくよ・くるよ」のくるよが亡くなった。相方の死から9年。くしくも、いくよの命日5月28日とは1日違い。最後の最後まで仲がよかった。
昨今、仲よし漫才コンビが増えてきたが、「いくよくるよ」は間違いなくそのはしりだ。高校時代、同じソフトボール部に所属。一緒に「島田洋之介・今喜多代」に弟子入りした。島田紳助は弟弟子にあたる。住まいも確かお隣同士だったような……。さしずめ今でいうところの阿佐ヶ谷姉妹のようなものだ。
昔の女性コンビは結婚したらダメになるといわれ、独身を通した。その分、2人の結びつきはただの相方以上のものだったと察する。
「いくくる」は女性漫才コンビのパイオニアともいわれているが、実際はその前にも女性コンビはいた。東は「内海桂子・好江」、西なら「海原お浜・小浜」。トリオなら「かしまし娘」や「フラワーショウ」もいる。
「海原お浜・小浜」は叔母と姪の漫才で、姪の小浜の孫が関西で何本もレギュラーを抱えている「海原やすよ・ともこ」。面影だけでなく、漫才のDNAも受け継いでいる。関西以外ではあまり馴染みがないが、ともこが昨年から「M-1」の審査員に就任、きっちりとその役目を果たし、称賛された。
そういえば、「西の女帝」といわれる上沼恵美子が姉と組んでいた漫才コンビ「海原千里・万里」も同門。今ならCDを出す芸人も大勢いるが、当時はまだ珍しく、彼女たちが歌った「大阪ラプソディー」の大ヒットが上沼を増長させたのか。
■どこが面白いのか理解できなかったが…
正直いって漫才ブームの頃は、たけしや紳助やB&Bにザ・ぼんちと早口で機関銃のようにまくし立てるコンビが多く、そういうのがお笑いだと思っていたので、「いくくる」のどこが面白いのか理解できなかったし、奇抜な衣装で笑わすのも好みではなかったのだが……。
結局のところ、ジェンダーバランスで、1組くらい女性コンビも入れておこうとキャスティングされていたのではないかと思う。それは本人たちが一番わかっていてインタビューで自分たちの実力のなさに悩んだ時期もあったと答えていた。
そこから続く「春やすこ・けいこ」「非常階段」「ピンクの電話」「ハイヒール」「オセロ」「オアシズ」「パイレーツ」「モエヤン」「アジアン」……あたりも含め、圧倒的に女性の漫才師コンビの数は少なく、面白いか面白くないかは別にして、タレントとして優遇されていたように思う。
そんな時代を経て、今や石を投げれば女性コンビに当たるのではというほど激増した。
それでも、漫才の賞レース「M-1」の決勝に残ったのは、長い歴史の中でアジアン、変ホ長調、ハリセンボン、ヨネダ2000とわずか4組と寂しい限り。
個人的には、あえて露悪的に下ネタをバンバンやる「オダウエダ」などに期待しているのだが……。
(桧山珠美/コラムニスト)