【6月2日付編集日記】スペースデブリ

 「デブリ」はフランス語で山の崩落などで壊れたり、散らばったりした岩くずや雪の塊などを意味する。福島第1原発事故の廃炉作業に立ちはだかる燃料デブリの影響か、多くの人はあまり良い印象は抱いていない

 ▼スペースデブリも同じ存在といえる。地球から打ち上げられて気象観測や通信などに使われた人工衛星の残骸だ。本来、役目を終えれば大気圏に再突入させて燃焼させるのが国際ルールだが、制御不能になり宇宙空間をさまよっている

 ▼微小な破片を含めると、その数は1億個を超える。運用中の人工衛星との衝突、地球に落下する事故が起きたこともある。回収に向けた技術開発に世界中で取り組んでいるものの、困難を極めている。原子炉内のデブリと同様に、かなり厄介だ

 ▼京都大などが世界初の木造の人工衛星を開発した。材料は強度の高いホオノキ、箱形で1辺10センチと超小型だ。継ぎ目にくぎなど金属を利用せず、日本の伝統工法で組まれた

 ▼最大の特長は金属より燃えやすく、燃焼時に有害物質を出さないこと。9月に打ち上げ、宇宙空間での木材利用の可能性を探る。これ以上、ごみを増やしてならないのは宇宙も同じだ。天然の素材で何とか活路を開きたい。

© 福島民友新聞株式会社