諫早湾干拓問題、雲仙で説明会 開門派との溝埋まらず 間接強制金「返還求めない」

開門確定判決の原告・弁護団(左側)に対して農林水産省が開いた説明会=雲仙市、瑞穂町公民館

 国営諫早湾干拓事業の潮受け堤防開門問題で、農林水産省は1日、開門確定判決の原告漁業者・弁護団に対する説明会を長崎県雲仙市内で開いた。国は非開門による有明海再生への話し合いに向け国の方針を説明する場と位置付けたが、開門を求める漁業者との溝は埋まらなかった。
 一方、国は開門しない代わりに漁業者45人に支払った間接強制金(1人当たり約2730万円、総額約12億3千万円)の返還を求めないことを明らかにした。漁業者側はこれまで、受け取った間接強制金は有明海再生に活用する考えを示している。
 説明会には確定判決原告で、請求異議訴訟の当事者となった漁業者のうち17人と弁護団が出席。農水省経営体育成基盤整備推進室の渡辺一行室長らが「開門せず、基金で有明海の再生を目指す」との国の方針や資源回復への取り組み状況を説明し、理解を求めた。
 これに対し、漁業者側からは「開門せずに潮流をどう戻してくれるのか」「(漁獲が低迷し)生活に追われている。後継者もいない」などと悲痛な訴えが上がった。国側は次回開催について、本省に持ち帰って検討するとした。
 福岡高裁が国に開門を命じた2010年の確定判決を巡っては、国が執行力排除を求めた請求異議訴訟を起こし、最高裁は昨年3月、訴えを是認した。最高裁の「非開門」判断を踏まえ、農水省は「有明海の未来を見据えた『話し合い』の場を設ける」との大臣談話を発出。話し合い実現に向け、談話の趣旨や有明海再生の取り組みについて説明する場を提案していた。
 説明会は公開され、約50人が傍聴した。

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