「苦しかった…」黄金世代・新垣比菜が苦難を乗り越え涙の6年ぶりV

涙の6年ぶりVを挙げた新垣比菜(撮影:佐々木啓)

<ヨネックスレディス 最終日◇2日◇ヨネックスカントリークラブ(新潟県)◇6339ヤード・パー72>

大粒の雨のなか、涙がこぼれた。2日目に自己ベスト『63』をマークして首位に浮上した25歳の新垣比菜が、最終日に4バーディ・2ボギーの「70」。トータル14アンダーで逃げ切り、2018年の「サイバーエージェントレディス」以来6年ぶりとなるツアー2勝目をつかみ取った。「すごくうれしいというか、ホッとしています」と優勝会見では本音がこぼれた。

昨年4月の「フジサンケイレディス」以来となる最終日最終組でのプレー。早朝からの大雨で厳しいコンディションのなか、首位の座を明け渡さなかった。「これまでだと緊張をしてしまって、全然ゴルフにならなくなってしまうのが、いつものパターンだった。なので、落ち着いて、なるべく平常心を心掛けてゴルフをしました」。

2位と3打差をつけて迎えた最終18番でウィニングパットを決めると、3年前からキャディを務める兄の夢蔵(むさし)さんが横で号泣。「兄が泣いているのを見て、私も涙が出てきました」。グリーンサイドには、同学年の吉本ひかる、大里桃子らが出迎えて祝福した。

新垣は、渋野日向子や畑岡奈紗らと同じ1998年度生まれの黄金世代。2011年の地元・沖縄で行われた開幕戦「ダイキンオーキッドレディス」には、史上3番目の年少記録となる12歳74日で出場。トップアマとして活躍した。17年のプロテストに合格。ルーキーシーズンの18年に世代一番乗りとなるツアー優勝を挙げた。

しかし、そこからショットの調子が悪くなり、20-21年シーズンにシード権を喪失。今年はQTランキング13位の資格でレギュラーツアーに出場していた。6年も優勝から遠ざかっていた日々は「苦しかったですね、沖縄に帰りたかった。どうやったら調子を戻せるのか、上手くなれるのか。はっきり分からないままゴルフをしていたので、色々悩みながらやることが多かったです」。22年の9月頃から青木翔コーチの門を叩き、スイング改善に取り組んできた。その努力が北陸の地で結実した。

これからの目標は、「優勝をまたできたら最高ですけど、今回のようなチャンスがまた来るのかなとか思うと、ちょっとよく分からない。とりあえず、QTを受けなくていいので。もっと楽に、何にも追い込まれずに、気持ちのいいゴルフをしたいです」。苦しい時期を乗り越え、歓喜の瞬間を迎えた25歳。これからも自然体のゴルフを崩さず、さらなる飛躍を目指す。(文・神吉孝昌)

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