【6月3日付編集日記】著作権

 チョビひげに山高帽、きつめの上着とぶかぶかのズボンのチャーリー。映画の監督から「何でもいいのでコメディーの格好をしてほしい」と言われて、チャップリンが生み出した

 ▼チャップリンはメークを終えたとき既にその人物像を固め、スタッフにこう説明している。「ホームレスで紳士、詩人で夢想家。孤独な男で、いつもロマンスと冒険を期待しています」

 ▼便乗商法で多くの映画に偽チャーリーが現れたが、どれも姿を似せただけの安易な代物。チャップリンは禁止を求める訴訟を起こして、それをやめさせた。一方で、子どもらの物まねコンテストなどには寛容だった(大野裕之「ディズニーとチャップリン」光文社)

 ▼さまざまな情報を学習して文章や画像を作る生成AI(人工知能)の浸透を受け、国が知的財産保護との兼ね合いなどについて検討を進めている。創作などに携わる人には、ようやくとの思いがあるのではないか

 ▼チャーリーの物まねコンテストに出場したことがあったディズニーが、あこがれの喜劇王から受けた最初の助言は「著作権は他人の手に渡してはだめ」だったという。模倣が本家かのように振る舞い出せば、その先に待っているのは悲劇だろう。 

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