【J2「鬼門」】清水、“鮮烈ミドル”好調・山口の堅守を崩せず “苦手のアウェイ”の改善急務(1)

乾貴士が8試合ぶりにスタメン出場も清水は敗北  撮影/中地拓也

■苦手のアウェイで前半に2失点

「超攻撃的」が、沈黙した。

J2リーグ第18節が6月1、2日に開催され、首位の清水エスパルスは2日、6位のレノファ山口FCとアウェイで対戦した。清水にとっては過去3勝1分の負けなしと、相性のいいカードである。昨シーズンのアウェイゲームは、6対0で大勝した。その一方で、清水は今シーズンここまで喫した3敗が、すべてアウェイゲームである。

清水はMFカルリーニョス・ジュニオがメンバー外となり、MF乾貴士が8試合ぶりにスタメン入りした。システムも乾をトップ下に配する4-2-3-1でスタートする。

昨シーズンのJ2を残留圏ギリギリの20位で終えた山口だが、今シーズンは志垣良監督のもとで白星を先行させている。直近は4戦負けなしだ。清水も簡単な相手でないことは分かっていたはずだが、序盤から主導権を握られてしまうのだ。

14分には右サイドから侵入され、左SB新保海鈴のアシストからMF吉岡雅和にプッシュされた。前節までリーグ3位の5アシストを記録している新保には、その後も自分たちの右サイドを制圧された。

清水は失点後も慌てることはない。時間はまだたっぷりある。試合の流れとは関係なしに、相手の組織を破壊できる「個」がいることも、彼らが冷静に試合を運べる理由だ。しかし、4-4-2のブロックで中央をしっかりと締めてくる相手を、すぐに崩すことはできない。その間に、2失点目を喫する。

右サイドでテンポ良くパスをつながれ、ペナルティエリア外からMF佐藤謙介に右足ミドルを決められてしまった。選手同士がワンタッチでボールをさばける距離感で関わり、ショートパスで相手の守備ブロックの隙間へ侵入する山口の攻撃は、清水のお株を奪うものだった。

■原と山原のシュートがバーに嫌われ…

いいところなく前半を終えた清水は、後半開始から交代カードを切る。MF矢島慎也とMFルーカス・ブラガが下がり、MF松崎快、FW千葉寛汰がピッチに立つ。松崎は2列目右サイドに入り、千葉とFW北川航也が2トップを組む。

53分には警告を受けたボランチ白崎凌兵を下げ、MF宮本航汰が起用される。秋葉忠宏監督は早めに動いてビハインドを跳ね返そうとするが、思惑どおりにはいかない。山口は重心を下げ過ぎず、局面でハードワークすることで、清水にスキを見せないのだ。

それでも、時間の経過とともに山口のボールホルダーへの寄せが遅くなり、選手同士の距離が少しずつ空いてくる。スペースと時間を得た清水は攻撃のギアを上げていき、乾が中央でボールを受けて縦パスを差し込み、相手が中央を閉じてきたところでサイドへ展開する。71分には乾、松崎、北川とワンタッチでパスがつながり、右サイドのDF原輝綺へ展開する。ペナルティエリ内まで持ち込んだ原のコントロールショットが、バーを叩いた。

81分には乾が中央でファウルを受ける。この反則で得た直接FKを、左SB山原怜音が狙う。壁を越えた一撃が、またしてもバーに嫌われた。後半は相手を上回る9本のシュートを浴びせたものの、1試合1失点以下の堅守を誇る山口を崩しきれない。今シーズン3度目の無得点で、清水は敗戦を喫したのだった。

試合後の秋葉監督は「ふたつ取られると難しくなるので、先制されても我慢できるような、そういうところを見直したい」と話した。これでシーズン4敗目となったが、そのすべてがアウェイである。選手たちの心に苦手意識がすみつかないうちに、アウェイの戦いを改善しなければならない。

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