【J2「鬼門」】上位を追う仙台、19歳MFの鋭い縦突破から決勝点 森山監督「何とか身体張って」耐え抜いて4位浮上(2)

鋭い仕掛けで決勝点を演出したMF名願斗哉M  撮影/中地拓也

■前節大敗の仙台は「仕切り直し」の上位対決に

身体を張った。最後まで張って、逃げ切った。

J2リーグ第18節が6月1、2日に行なわれ、前節まで5位のベガルタ仙台は2日、7位のいわきFCと対戦した。仙台は勝点29、いわきは勝点27で、この試合の結果次第では順位が入れ替わる。

アウェイの仙台は、ボランチの長澤和輝が累積警告で出場停止となる。代わってMF松下佳貴が起用された。さらに右SBに真瀬拓海が、左MFに、川崎フロンターレから育成型期限付き移籍している19歳の名願斗哉が入る。真瀬はシーズン初先発だ。開幕から4バックを固定してきた森山佳郎監督が、最終ラインに初めて手を加えた。

前節のファジアーノ岡山戦で1対4の敗退を喫した仙台は、開始早々にセットプレーから試合を動かす。6分、右CKを松下が蹴ると、ペナルティエリア内の密集から外れていた左SB高田椋汰が右足ボレーで合わせる。DFに当たってコースの変わったボールは、GKの手を弾いてネットに吸い込まれた。デザインされた形から、仙台が先行した。

岡山戦は10分に先制したあと、攻撃のペースが落ちて20分過ぎに同点とされた。リードをしたあとの試合運びはポイントで、相手に主導権をわたさずに1対0のまま前半を終える。

ところが、リードは後半開始直後に消える。45分51秒、左サイドからのクロスをいわきFW谷村海那に右足ボレーで蹴り込まれてしまうのだ。岡山戦の2失点目とほぼ同じ時間帯の失点で、同点に追いつかれたのだった。

■身体を張った守備で仙台が勝点3を手繰り寄せる

1対1に追いつかれた直後に、どのようなリアクションを見せるのか。ここで仙台は、前節との違いを見せる。

52分だった。中盤でボールを収めたMF郷家友太が左サイドへ展開すると、名願がしかける。得意のドリブルで縦へ抜け出し、左足でフィニッシュする。GKが弾いたボールにゴール前へ詰めていた右SB真瀬が猛然と反応し、相手守備陣を混乱させる。こぼれ球をFWオナイウ情滋がねじ込み、仙台は再びリードを奪った。スタメン起用の名願と真瀬が特徴を発揮し、この日は2トップの一角で起用されたオナイウが逆転弾と、森山監督の選手起用が的中した。

ここから先は守勢に立たされた。シンプルにクロスを入れてくる相手に押し込まれ、相手のシュートがバーを叩く場面もあったが、失点は許さない。

86分には松下とFW中島元彦を下げ、DF内田裕斗とFWエロンを投入する。それまで4バックで3トップ気味の相手に対峙していたが、守備時は5バックとするシステムに変え、逃げ切りの姿勢を鮮明にする。後半だけで11本のシュートを浴びながら、仙台は2試合ぶりの勝利をつかんだ。

試合後のフラッシュインタビューで森山監督は、「内容的には決してほめられた試合ではなかった」と切り出した。そのうえで、「いわきさんの勢いにのみ込まれそうなところで、何とか身体張って。身体を張って戦うところは負けないようにしようと話していて、そこは最後までやってくれた」と、選手たちの粘り強いパフォーマンスを讃えた。

今節は4位の岡山が敗れたため、仙台はひとつ順位をあげて4位となった。一方で、2位のV・ファーレン長崎がクラブ記録となるリーグ戦15戦負けなしで、首位の清水エスパルスに勝点1差と迫っている。仙台と清水は勝点8差、長崎とは7差だ。

清水、長崎に食らいついていくためには、仙台も勝点獲得のペースをあげていかなければならない。次節も一戦必勝のメンタリティで、アウェイのヴァンフォーレ甲府戦に挑む。

© 株式会社双葉社