質はいいのに知名度イマイチ…認証開始から4年、地域ブランド「薩摩のさつま」43商品の販路拡大へ関係者が動き始めた

「薩摩のさつま」認証事業者の畑で、茶葉の収穫を楽しむ家族連れら=さつま町白男川

 鹿児島県さつま町の地域ブランド「薩摩のさつま」が、認証開始から4年目を迎えた。認証品は現在28事業者43商品に上るが、「初めて名前を聞いた」「どこで買えるか分からない」との声も聞かれる。関係者は周知、販路拡大に向け、ホームページの開設や物産店への積極的な出品に力を入れる。

 紫尾山麓にあるさつま町白男川の茶畑に5月5日、歓声が広がった。町内の旬を味わう遠足イベントが認証事業者の茶畑であり、町内外の家族連れら24人が、作り手のこだわりや摘み方のコツを教わりながら新茶摘みを楽しんだ。

 薩摩川内市のライター森夏香さん(35)は、鹿児島に住み始めて3年目。「薩摩のさつま」についてほとんど知らなかったといい、「生産者の思いをじかに聞けて興味が湧いた。今後は認証品が陳列されていれば手に取ると思う」と話した。

 同ブランド推進協議会は新型コロナウイルスの5類移行を受け、認証品を生かした催しや物販を積極的に展開。2023年度の活動は町内23回(22年度3回)、町外は20回(同10回)に上った。

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 ブランドの情報発信に加え、認証品の磨き上げに一役買っている試みが「おとなりさんのソムリエ」だ。各事業者がそれぞれの商品価値を認め合い、身近な人「おとなりさん」に薦めたり、販売したりする。

 同町宮之城屋地の老舗菓子店「是枝商店」は、22年度に看板商品「いちごまんじゅう」が認証された。商品は朝作ってその日に食べてもらうなど品質にこだわり、町外販売はほぼしてこなかった。

 ただ「信頼」できる認証事業者が代わりに販売する試みに共感し、県外出品にも乗り出した。おかげで来店する県外客は多い月で、認証前の5倍に増えるなど成果を上げている。

 4代目の是枝樹さん(32)も、他の認証品を県外でPR販売したことも。「他の商品を知ることは販売手法など学びが多い。町内の魅力を再発見するきっかけにもなる」という。

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 認証品は各事業者がそれぞれ販売先を確保しているため、常時一堂に会する売り場がない。そこで24年度からEC(電子商取引)機能を加え、全ての認証品を網羅したホームページを開設、販路拡大を進める。

 認証品の磨き上げでは若者目線を生かそうと、23年度に鹿児島大学生と共同で商品パッケージも開発。事業者が異業種の生産現場を体験し、魅力に触れる機会もつくる。

 協議会の堀之内力三幹事長(45)は「この3年間で事業者同士のつながりは強くなった」と手応えを口にする。一方、各事業者がもうけを生み出して持続的な経営を進めるため、「卸売業者との価格交渉力を養う必要がある。協議会を中心に協力しながら、ブランド価値を高めていきたい」と将来を見据えた。

■薩摩のさつま さつま町、JA北さつま、町商工会、町観光特産品協会が連携して「薩摩のさつまブランド推進協議会」を2021年に立ち上げた。さつま町が好きであること、町ふるさと納税返礼品に登録できるなど独自の基準で認証。現在の認証品は農畜産物から焼酎、工芸品などジャンルは幅広い。売り上げの一部は教育・スポーツ振興の支援に充てる。第1弾として、23年度に宮之城中学校の生徒が利用するバス待合所にベンチを設置した。

2023年度に新たに認証された商品

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