ロケット打ち上げ1回ごとに2400万円ナリ…種子島での観光消費額などJAXAが試算 宇宙センターに伴う経済効果は117億円 通年型の観光創出やホテル不足、地域産業との連携に課題

射場に最も近い恵美之江展望公園の入場は事前抽選。毎回、鹿児島県内外から多数の応募がある=1月12日、南種子町平山

 宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、宇宙関連事業が地域にもたらす経済効果をまとめた。種子島宇宙センター(鹿児島県南種子町)でロケットの打ち上げがあるごとに、見学に訪れる観光客らの消費額が約2400万円見込まれると試算した。同センターが種子島にあることによる全体の経済効果は、計117億3500万円としている。

 JAXAの経済分析は2006年以来。島内1市2町や宿泊施設の聞き取り、観光・ビジネス客へのアンケート、関連事業の発注額などを基に算出した。

 アンケートは23年6~7月にウェブで実施し、約500件の回答があった。ロケット打ち上げ1回につき、宿泊を伴う客の平均消費単価はビジネス6万2000円、観光5万6000円。宿泊日数はビジネスが5泊以上、観光客は1泊が多かった。消費単価に入り込み客数などを掛け合わせた経済効果は、島内1市2町で48億6200万円。

 打ち上げ準備や射場の保守点検に伴う島内企業への発注額は21年実績で約107億円。地元雇用者の所得、原材料確保などを含め、経済効果は66億9500万円となっている。

 このほか、1市2町を合わせた税収は7億8400万円、雇用効果が745人だった。JAXAは「前回調査と近似した結果で、継続的な経済効果が出ている」と結論付けた。

 一方、課題に(1)通年型の観光ニーズがない(2)宿泊施設の不足(3)地域産業との連携不足-を挙げた。島内消費をさらに増やすためには「農業などと連携した滞在型観光プログラムの強化が必要」と指摘している。

 同センターでのロケット打ち上げは、6月30日のH3ロケット3号機をはじめ、H2Aの最終50号機など、24年度に5回程度が予定されている。

 JAXAが公表した経済効果は種子島全体で117億3500万円に上る。このうち6割を占めるのが、種子島宇宙センターがある南種子町だ。ただ、観光客らの消費額では西之表市に後れを取っており、町は年6機とされる新型基幹ロケット「H3」の運用方針を見据え、昨年から通年の誘客に本腰を入れている。

 島内1市2町と新進気鋭の芸術家が連携し、宇宙をテーマにしたイベントや作品で島を盛り上げる「種子島宇宙芸術祭」。2020年に解散したが、南種子町は22年度、町商工会やIターン者と復活させた。

 23年度には、サマーキャンプやハロウィーンイベント、プロジェクションマッピングを実施。ほかにも、サイクリングコース作りに向けて研修会を開くなど、観光客の呼び込みに力を入れている。

 24年度は、日本人が初めてスペースシャトルで宇宙へ飛び立った9月12日の「宇宙の日」に合わせ、町は「宇宙のまち」を宣言する方針だ。小園裕康町長は「南種子産の商品にも活用でき、これほど分かりやすいPRはない。特に若い世代が関心を持つきっかけになればいい」と期待を寄せる。

ごう音とともに上昇するH3ロケット2号機=17日午前9時22分、南種子町の種子島宇宙センター
H3ロケット2号機の打ち上げでは2000人以上の見学客が南種子町に集まった=2月17日、同町中之上

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