伝統の発酵技術から生まれたヒット商品の魅力

福島県内で長く愛されている老舗の今に迫る「老舗物語」。今回紹介するのは創業117年、郡山市の『宝来屋本店』です。失敗をしてもあきらめない。伝統の発酵技術からヒット商品を生み出してきたその歴史に迫ります。

そんな宝来屋が誕生したのは今から100年以上前の1906年。明治時代に初代・柳沼雄太郎さんが始めたのは、発酵食品のもととなる「糀」の販売でした。

事務所の中には、創業した当初から伝わる〝あるモノ″が保管されています。

\--柳沼広呂人社長(宝来屋)「これが、初代・柳沼雄太郎氏が明治39年に阿武隈川を渡ってお店を開いたときの『かつぎ棒』になっています。」

現在の郡山駅周辺は、その昔、旅人の疲れを癒す宿場町として繁栄。宿では旅人に漬物などをふるまうため、周辺の糀屋からよく糀を購入していたといいます。

\--柳沼広呂人社長(宝来屋)「往来する旅人たちの旅籠が、たくさん郡山と本宮にあったという話を聞いて。そこに初代と2代目の社長が糀漬けの漬物を宿場町に売っていたのがスタートと聞いております。」

当時はまだ近くの阿武隈川に橋が架かっていなかったため、初代の雄太郎さんは「かつぎ棒」をかついで渡り船に乗り、川の向こうの宿まで自家製の「糀」を運んでいました。郡山駅周辺が宿場町から現在の姿に変化していくと同時に、宝来屋の商品の販売方法も変わっていきます。

一般の家庭でも簡単に使えるように、糀を基にして作る味噌や三五八のもと。それにあま酒の販売を始め、この100年で様々なヒット商品を生み出してきました。

中でも発酵食品業界に衝撃が走ったのが2003年に販売を開始したペットボトルのあま酒です。それまでは袋型の入れ物で販売することが主流でしたが、宝来屋は日本で初めてペットボトルに入れて『冷やして飲めるあま酒』を開発しました。

管理が難しいと言われる糀のあま酒の開発に、先代の正人さんは試行錯誤を重ねました。

\--柳沼広呂人社長(宝来屋)「その時にかなり失敗したんですよ。酸味が出てしまったり、ふくれてしまったり。たくさんの失敗を重ねて、いまのペットボトル商品につながりました。」

失敗をしても開発をあきらめなかったのは、先代の「誰でも手軽にあま酒を口にできるようにしたい」そんな思いがあったからです。

\--柳沼広呂人社長(宝来屋)「袋を破って鍋に入れて、お湯で薄めてというスタイルがその当時はほぼほぼだったので、ストレートタイプに加工して薄めずにそのまま飲める。キャップをとってそのままごくごく飲めるスタイルにこだわりたかった。」

そして現在、宝来屋は発酵食品の可能性を広げようと新たな商品を開発しています。去年、販売を開始したこちらの商品は、米糀と小豆で作った「発酵あんこ」。砂糖不使用ながらやさしい甘みと豊かなうまみを醸しだす一品です。

\--柳沼広呂人社長(宝来屋)「発酵食品が静かなブームになっているので、発酵あんこや醤油こうじなどいろいろなヒット商品の開発をがんばっていこうと思っています。」

糀屋から始まった宝来屋には、100年以上受け継がれる伝統と、発酵食品の可能性を探り続ける探求心がありました。

『ステップ』
福島県内にて月~金曜日 夕方6時15分~放送中
(2024年5月30日放送回より)



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