日中韓首脳会談、「はくりゅう」、友情結婚…スイスのメディアが報じた日本のニュース

日中韓首脳会談後の共同記者会見に臨む岸田文雄首相 (Kim Hong-Ji/Pool Photo via AP)

スイスの主要報道機関が先週(5月27日~6月2日)伝えた日本関連のニュースから、①4年半ぶり日中韓首脳会談②観測衛星「アースケア/はくりゅう」打ち上げ③「友情結婚」が人気上昇の3件をピックアップ。要約して紹介します。

4年半ぶり日中韓首脳会談

5月27日、日中韓首脳会談がソウルで開かれました。およそ4年半ぶりとあって、ドイツ語圏、フランス語圏、イタリア語圏のスイス公共放送がそれぞれ取り上げる注目の会談となりました。

3カ国関係の「新たな始まり」――ドイツ語圏のSRFは中国の李強(リー・チャン)首相の言葉を見出しに、3国が経済関係を強化し「自由貿易協定(FTA)について交渉する」と報じました。3カ国会談が再開した背景に「米中の戦略的対立の深刻化」があるとして、次のように説明しました。「韓国と日本は中国と緊密な貿易関係を築いているが、中国政府の権力欲の増大に対する米国政府の懸念を共有している。一方で中国は、日韓が米国と緊密に軍事協力していることに悩まされている」

フランス語圏のRTSは、北朝鮮の非核化で3カ国が一致したことに注目しました。会談の正式な議題には上がっていませんでしたが、会談直前に北朝鮮が人工衛星の打ち上げを予告したのを受けて急遽議題に。「北朝鮮の非核化と朝鮮半島の安定は3カ国の共通利益」であると確認したものの、「中国は北朝鮮の最大貿易相手国であり、北朝鮮の核実験への非難を拒否したことがある」と温度差があることも報じました。

イタリア語圏のRSIは、3カ国が気候問題などでは協力強化が確認された一方、「首脳間の一部のやりとりで二国間地域の緊張が表面化した」と伝えました。例として、中国政府が「危険な分離主義者」とする頼清徳氏が台湾総統に就任した直後、台湾周辺で大規模な軍事演習を行ったことを念頭に、岸田文雄首相が李首相との2者会談で「台湾海峡の平和と安定は国際社会にとって極めて重要である」と伝えたことを挙げました。

(出典:SRF/ドイツ語、RTS/フランス語、RSI/イタリア語)

観測衛星「アースケア/はくりゅう」打ち上げ

欧州宇宙機関(ESA)と宇宙航空研究開発機構(JAXA)が共同開発した地球観測衛星「アースケア」が5月29日(日本時間)、米カリフォルニア州のバンデンバーグ宇宙軍基地から打ち上げられました。塵の粒子や雲が気候に与える影響を測定するために、4つの測定器が搭載されています。ドイツ語圏の日刊紙NZZは、アースケアの特長を解説しました。

スイス連邦工科大学チューリヒ校(ETHZ)の物理学者ウルリケ・ローマン氏はNZZ に、特に日本が開発したレーダー装置「雲プロファイフィングレーダ(CPR)」に満足していると語りました。「CPRのおかげで、ついに(粒子の)垂直方向の速度に関する世界的な全体像を得られるのは素晴らしいことだ。新しい次元だ」

CPRは雨粒や雪片が地面に落ちる速度を測定できます。NZZによると、気候学者の間ではハリケーンなどの気象現象で垂直速度が低下することが注目されていますが、地上からこれらを測定するのは非常に困難だそうです。独マックス・プランク気象研究所のビョルン・スティーブンス所長も、宇宙からこれらのデータを提供できるようになることがいかに貴重であるかを強調しました。

記事は、「アースケア」は欧州での呼び名で、日本では「はくりゅう」と呼ばれていることも紹介しました。「確かに、想像力を働かせて見てみると衛星は凧のような形をしており、断熱材のせいで白みを帯びている」。JAXAがPRのため制作した鯉のぼりの紙工作動画も掲載しました。(出典:NZZ/ドイツ語)

「友情結婚」が人気上昇

日本ではいわゆる「友情結婚」という新たなトレンドが生まれつつある――オンラインニュースメディアnau.chは、香港の英字紙サウスチャイナ・モーニング・ポストの記事を引用し、「共通の趣味や価値観に基づいて恋愛感情や性交渉のない結婚を選択する若者が増えている」と報じました。

記事が引用したのは友情結婚を専門とする日本の結婚相談所Colorus(カラーズ)のデータ。2015年3月の創業以来、約500人が友情結婚で世帯を築きました。記事は同社の推定を引用し、「日本人口1億2500万人の1%が友情結婚をしている」と報じました。友情結婚は法的には配偶者となりますが、別居や(双方の合意があれば)他人との恋愛も許される関係です。無性愛者、同性愛者を含む「伝統的な結婚に失望した人々」のほか、「安定した大人」像を得て親を喜ばせたい人々に選ばれていると言います。

記事は「日本以外でも、伝統的な結婚の規範を超えた関係を模索する若者が増えている」と続け、シンガポールや中国の友情婚の事例を紹介しました。(出典:nau.ch/ドイツ語)

【スイスで報道されたその他のトピック】

話題になったスイスのニュース

先週、最も注目されたスイスのニュースは「フェデラーの艇庫建設に反対運動 『湖岸への出入りを阻害』」(記事/日本語)でした。他に「ベルンの名所『子喰い鬼』噴水の由来は? 市が新しい説明書き」(記事/日本語)、「スイス観光業、夏シーズンは好調予想」(記事/英語)も良く読まれました。

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次回の「スイスで報じられた日本のニュース」は6月10日(月)に掲載予定です。

要約:ムートゥ朋子、校閲:大野瑠衣子

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