9年目突入の『Dead by Daylight』「D&Dコラボ」開発秘話や「2対8モード」の仕組みを聞いた【インタビュー】

9年目突入の『Dead by Daylight』「D&D;コラボ」開発秘話や「2対8モード」の仕組みを聞いた【インタビュー】

5月15日に開催された8周年記念イベントで様々な新情報が公開された『Dead by Daylight』。

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今回、6月4日に配信が開始された「ダンジョンズ&ドラゴンズ(D&D)」コラボチャプターおよび、今夏の詳細公開が予告された「2対8」モードについて、開発者インタビューを行う機会をいただきました。

お話を伺ったのは『Dead by Daylight』でゲームデザイン・ディレクターを務めるマシュー・スプリガンス氏と、メインゲームデザイナーを務めるジャニック・ヌヴー氏。早速、インタビューの様子をお届けしていきます。

「D&D」コラボチャプターには新たな遊びが盛りだくさん

ジャニック・ヌヴー氏

――これまでの『DbD』とはテイストが異なる作品とのコラボだと感じましたが、コラボのきっかけについて教えてください。

ジャニック氏パートナーシップ責任者のマシュー・コートをはじめ、開発チームメンバーの多くが「D&D」ファンだったことがきっかけです。「D&D」サイドにも『DbD』に詳しい方が大勢居たのでコラボに向けた話し合いはスムーズに進みました。

実は、1980年代の「D&D」は恐ろしいモンスターやデーモンを扱っていたのですが、保護者に子供向きのゲームではないと判断されるのを避けるため、それ以降はファンタジー寄りの内容が多くなっていました。ところが、最近になって「D&D」で最も有名で恐ろしい悪役の1人である「ヴェクナ」の再登場が決定し、『DbD』とのコラボにもベストなタイミングということで企画が動き出しました。

――新マップ「忘れ去られた遺跡」についての質問です。『DbD』世界にダンジョンを作り上げるまでの過程や苦労について教えてください。

ジャニック氏『DbD』のゲーム性を踏まえるとマップには広い空間が必要ですが、そこに室内エリアを取り入れることで新たな感覚をもたらし、ゲームを更に奥深いものにできると考えています。そこで、地下エリアとしてダンジョンを製作し、その外の空間もマップに含める形にしようと決めました。

ただし、これではマップが広大になり過ぎてしまうという問題点も存在します。この課題を解決し、このマップが持つもう1つの特徴である垂直方向への広がりも上手く活用できるようにするため、ワープゲートを設置しました。

また、広大なマップの中で自分がどこにいるのかを見失わないようにするために、ビジュアル面でも様々な工夫を行っています。

――ワープゲートはダンジョンらしく、かつ思い切った仕掛けだと感じました。この仕掛けはチェイスなどでどのように機能することを期待していますか。

ジャニック氏『DbD』はとてもダイナミックなゲームなので、チェイスのペースを妨害してしまわないかという点に注意して開発を行いました。複数の試作品でテストを繰り返し、キラー側でもサバイバー側でも問題なく機能するように仕上げています。

例えば、ワープゲートを出たり戻ったりすることで対戦相手を混乱させてしまわないように、ワープゲートは一方通行にしています。

サバイバーはワープゲートを使うとその場所をすぐに離れられる一方で、キラーが突然近くにやってくる可能性もあるというように、メリットとデメリットの両方が存在する仕組みになっています。

――新キラー「ヴェクナ」の能力はやや複雑な印象も受けましたが、開発する上でこだわった点はありますか。

ジャニック氏キラーを作る際には「使うのは簡単、使いこなすのは難しい」という点を常に意識しています。複数の能力を持つ「ヴェクナ」の場合、それぞれの能力を同じ形式の操作で発動できるように揃えています。そのため能力の発動自体は簡単ですが、それぞれの能力をいつ、どのように使うかはプレイヤーの力量が問われます。

「ヴェクナ」はある程度『DbD』の知識があるプレイヤーの方が扱いやすいかもしれませんが、初心者の方でも操作していて楽しめることは確かだと思います。

――日本には「ダンジョンズ&ドラゴンズ」に触れたことがないプレイヤーも一定数存在する印象で、かく言う私もその一人です。そこで、「ダンジョンズ&ドラゴンズ」を知らないプレイヤーに向けた本チャプターの魅力を教えてください。

ジャニック氏確かに、このチャプターには「D&D」のエレメントが数多く盛り込まれており、「D&D」ファンの方が楽しめるような内容になっています。とはいえ、このチャプターで導入される新しいメカニクスは全てのプレイヤーに新鮮な遊びを提供することができると考えています。

例えば、「ヴェクナ」は複数のアビリティを使い分ける初めてのキラーであり、サバイバーもダイスやマジックアイテムといったこれまでの『DbD』には無かった要素を楽しめます。また、アイテムの「アイ・オヴ・ヴェクナ」「ハンド・オヴ・ヴェクナ」を手に入れると、非常に強力なスキルを使って「ヴェクナ」に立ち向かうこともできるようになります。

遂に登場する新ゲームモード「2対8」とは

マシュー・スプリガンス氏

――新たなゲームモードの追加というのはこれまでの『DbD』の歴史を振り返ってみても大きな出来事ですが、この決断に至った理由をお聞かせください。

マシュー氏「2対8」は長年ファンの皆さんから多くのリクエストが寄せられていたゲームモードです。「消灯」や「My Little Oni(マイ リトル オニ)」、「カオスシャッフル」といったモディファイアの追加を経て、今が新モード実装のベストなタイミングだと判断しました。

このモードの狙いは、激しく競い合うのではなくパーティーモードのように楽しめる場を作り上げることです。モディファイアでも新モードでもコミュニティからの意見は非常に重要ですので、これまで通りフィードバックに耳を傾けながら開発を続けていこうと考えています。

私たちの戦略は、これまでの『DbD』を土台として新たなゲーム体験を追加していくというものです。これによりプレイヤーがいつ戻ってきたとしても楽しめる作品にできると考えています。

――試合の人数が通常の倍に増えるというだけでも、非常に大きな変化だと思います。そのため、ルールに大きく手が加えられているとのことでしたが、特に苦労した・している点について教えてください。

マシュー氏最初に苦労したのは、開発者の思い通りにはいかないカオスなパーティーゲームとしての性質を受け入れることです。プレイヤー数が倍になった状態では、両陣営の状況を完全にコントロールしたりバランスを取ったりすることはほとんど不可能だという現実に直面しました。

そのため、できるだけ接戦になるようにサバイバーとキラーの目標を設定することにも苦労しました。しかし最終的には、何とか接戦かつ面白い対戦になるようなルールを考え出すことができたと思います。

また、画面内の情報量が増え過ぎてしまうという点も課題でした。この問題を解決するためにプレイヤーが受け取る通知の量を制限しています。さらに、パークを使用禁止にしクラス制を導入することで、対戦相手や味方のパークを把握しきれないという状況を避けて、簡単に新モードに飛び込めるようにしています。

――サバイバーのクラスにはどのようなものが存在しますか。また、8人の中で同じものを選べないなどの制限はありますか。

マシュー氏クラスについてお伝えできるのは、発電機の修理、治療、走行、偵察といったゲームプレイの特定の要素に注目する形で作られているということまでで、詳細は近日中に行われる生放送で公開予定です。また、クラスを選択すると基本的なボーナスや情報等を得られるようになるのですが、特別なアビリティやチームワーク向けの能力なども順次組み込んでいきたいと考えています。

同じクラスを選択できるサバイバーの数には制限が存在し、フィードバックを元に細かい上限数の調整を行っていきます。キラー側についても同様で、チームメイトと同じキラーを選択することはできません。

――「2対8」では、特別に調整された一部のキラーやマップが登場するとのことでした。リリース時点で選択可能なキラーやマップを教えていただけますか。

マシュー氏リリース時点では、トラッパー、ハントレス、レイス、ヒルビリー、ナースの5体のオリジナルキラーが利用可能であり、「2対8」向けに拡張されたそれぞれのキラーの本拠地の5マップが登場します。また、今後もプレイ可能なキラーやマップ、クラスなどを追加していく予定です。

――マップの拡張に伴って発電機やゲートの数なども調整されるのでしょうか。

マシュー氏はい。基礎的なルールの部分にも手を加えているので、マップ上においても様々なものが追加されることになります。

――キラーが使用できるという「2対8」専用の能力はどのような内容をイメージしておけばいいですか。また、ヒルビリーのチェーンソーダッシュのようにキラー既存の能力はそのまま使えるのでしょうか。

マシュー氏キラーが元々持っている能力を使うことはできますが、「2対8」にあわせて少し調整が加えられている可能性もあります。また、専用の能力はチームメイトとの協力を促すような仕組みになっています。例えば、レイスのクローキング能力には周囲の仲間のキラーを探知不可状態にするという効果が付け加えられています。

現時点で「2対8」におけるキラーにはこのような形で調整が加えられていますが、今後キラーもクラス制に移行していくことを検討しています。クラス制を導入しプレイスタイルごとの能力の枠組みを用意しておくことで、個別に能力を変更していくよりも簡単に新たなキラーを「2対8」に対応させられるようになります。

全体的にキラー同士の協力を重視して開発を進めており、テストプレイでもキラー同士で協力して行動するとより良いパフォーマンスを発揮できることを確認しています。

――「2対8」のマッチメイキングはどのような形式で行われますか。また、キラ―側でフレンドとタッグを組んで対戦に臨むことは可能ですか。

マシュー氏はい。このモードでは『DbD』史上初めてフレンドと2人でチームを組み、サバイバーを追い詰められるようになります。また、マッチメイキングではMMR(スキルレーティング制)を採用しており、正しく機能しているかをモニターしつつ現在も調整を続けています。

終わりに

――少し話がそれますが、9年目のロードマップには2022年にPTBで登場した「フィニッシュ・モリ」を思い起こさせる「フィニッシャー・モリ」が存在しました。この「フィニッシャー・モリ」について現時点でお話しいただけることはありますか?

マシュー氏詳細についてお話しすることはできませんが、PTBに寄せられた多くのフィードバックを踏まえ、「フィニッシュ・モリ」をよりシンプルで分かりやすいものに改良した新システムだといえます。また、PTBで発覚したカメラに関する問題などについても対処しています。

――最後に『DbD』の9年目に向けた意気込みやメッセージをお願いします。

ジャニック氏既に多数の新コンテンツの開発に取り組んでおり、プレイヤーの皆さまに沢山の驚きや楽しみを提供する準備を整えています。もしかするとアジアの皆さまに特に喜んでもらえるようなチャプターも登場するかもしれません。『DbD』やファンコミュニティにとって素晴らしい1年となるはずです。

マシュー氏『DbD』をサポートし続けていただきありがとうございます。私たちは日本のファンコミュニティが持っている情熱が大好きです。これからスタートする刺激に満ちた9年目を通し、皆さまからの感想をいただけることを心待ちにしています。

また個人的な話になりますが、今年後半に日本を訪れる予定なので、素晴らしい日本の料理を食べて、素敵な日本の人々に出会えるのを楽しみにしています。

――本日はどうもありがとうございました。


『Dead by Daylight』「ダンジョンズ&ドラゴンズ」コラボチャプターは6月4日より配信中。「2対8」モードの詳細は7月のライブ配信で公開予定です。

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