渋野日向子〝全米女子オープン復活2位〟に2つの要因「新しい章がスタートできる感覚」

全米女子オープンで単独2位と健闘した渋野日向子(ロイター=USA TODAY Sports)

復活の要因は? 米女子ゴルフツアー今季メジャー第2戦「全米女子オープン」最終日(2日=日本時間3日、ペンシルベニア州ランカスターのランカスターCC=パー70)、72と粘った渋野日向子(25=サントリー)は通算1アンダーの単独2位と健闘した。シード権を喪失した昨季から続く今季の不振がウソのような快進撃は、あの快挙とも関係がありそうだ。

過去にも突如として調子を取り戻すことがあったとはいえ、この順位は誰も予想できなかっただろう。昨季はポイントランキング83位でシード権を喪失。巻き返しを期して臨んだ今季は、今大会前まで9試合で6度も予選落ちした。70台後半のスコアが頻発し、3月の「ブルーベイLPGA」2日目には80の大叩きも経験。最高位は50位にとどまっていた。

復活の要因の一つは、昨オフから上田桃子(37=ZOZO)や吉田優利(24=エプソン)らが師事する辻村明志コーチの指導を受けるようになり、持ち球のドローボール(右利きなら右から左に緩やかに曲がる球筋)を安定させたことだ。プロゴルファーでも新たなコーチとの取り組みは、習得まで時間がかかる。ツアー関係者から「難しいシーズンになるかもしれない」と懸念されていた中、渋野は持ち前の器用さを発揮。早くも形になってきた格好だ。

また、〝メジャーの呪縛〟からの解放も、復調の要因に挙げられる。あるベテラン男子プロは、海外メジャー初出場の2019年「AIG全英女子オープン」で優勝した〝副作用〟を次のように指摘していた。

「渋野選手は、自分のゴルフが全くわからない状態でメジャーを勝ってしまった。メジャーチャンピオンという肩書がついてしまうと、もっと良くしなきゃいけないという気持ちも出てくる。ファンやマスコミは期待するし、選手自身はもっとうまくならなきゃいけないと思って、いろいろ考え、コーチを代えたり、周りの意見もいろいろ聞くようになってしまう」

実際、渋野は全英女子の優勝後、20年オフに青木翔コーチと師弟関係を解消。特定の指導者をつけなかったが、22年オフに青木コーチとの関係を復活させた。より良くするつもりが、逆に不安定さを招いていた状況を踏まえ、昨オフからは辻村コーチに師事。目先の結果にとらわれず、自分の信じるゴルフスタイルを確立する努力を続けてきたことが、今回の結果につながった。

渋野は4日間にわたるメジャーの難セッティングとの格闘を終え「またここから新しい章がスタートできる感覚なので、すごく前向きな気持ち」。過去のしがらみと決別したかのような、すがすがしい表情だった。これから始まる〝新章〟では、どのようなストーリーが描かれていくのか。今大会優勝の笹生優花(22)に続く日本勢の海外メジャー2勝目や、米ツアーメンバーとしての初勝利が期待される。

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