ギャラリー設け、書店をつながりの場に 東根・絵画展、集会に活用

書店の一角に設けられたギャラリー。作者の西塔裕美さん(左)と店長の村田幹子さん=東根市・あすなろ書店東根店

 全国的に書店が減少する中、東根市の「あすなろ書店東根店」が書籍を購入する目的以外でも立ち寄ってもらえる場にしようと、店内の一角にギャラリーを設けた。現在は「私の推し 藤井風を描く原画展」を開催中。電子書籍やインターネットでの購入など、書店離れが進んでいるとされる中、ギャラリーを訪れた人たちに、改めて本や書店に興味を持ってもらおうと、取り組んでいる。

 書店出入り口近くの8畳ほどの空きスペース。歌手・藤井風さんをモチーフに、同市若木通り1丁目の西塔裕美さん(59)がシャープペンシルや色鉛筆で描いた70点が並ぶ。藤井さんのファンら200人ほどが県内外から足を運び、「絵から歌声が聞こえてきそう」などと好評を集めている。

 同店は昨年7月、「勝手にギャラリー」と名付け、地域の人たちに活動や発表の場を提供を始めた。展示会だけでなく、読み聞かせの練習会やミニコンサート、近隣の商店街の集会…。活用例は多岐にわたる。

 現在、作品展を開催中の西塔さんは2017年に夫を事故で亡くした。気持ちの落ち込む日々を送っていたが、20年に藤井さんの絵を描き始め、前向きになることができた。描きためた作品は約700点。展示会開催にも興味はあったが、会場確保や準備などに難しさも感じていた。今回は同店からの提案と店員の協力もあって展示会が実現し、「感謝しかない」と喜ぶ。作品展は10日までで、第2弾も検討している。

 書店ゼロの自治体の割合は今年3月現在、全国で27.7%、本県では31.4%に上る。店長の村田幹子さん(51)は、ギャラリーを開設したことで、従来の客層以外にも「店を知ってもらうことができた」と、効果を実感している。子どもからお年寄りまで、あらゆる世代が書店に足を運んでもらい、本に手を伸ばす機会も増やしてもらうのが理想だ。村田さんは「さまざまな人が集まり、つながる場にもしたい」と期待を寄せている。

【メモ】 作品展の開催時間は午前9時~午後7時で入場無料。日曜定休。ギャラリーに関する問い合わせはあすなろ書店東根店0237(42)0099。

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