反則金は最高1.2万円! 道交法改正で “自転車”の違法運転に「青切符」…もし拒否したらどうなる?【弁護士解説】

危険極まりない「ながら運転」には反則金も最高ランク( yosan / PIXTA)

改正道路交通法(道交法)が、参院本会議で可決・成立(5月17日)した。改正法では、自転車の交通違反に反則金を納付させる交通反則通告制度、いわゆる「青切符」の導入が柱となっており、16歳以上が対象になる。2年以内に実施される。

自転車による事故はここ数年増加傾向だが、顕著に増えているわけではない。だが、スマートフォンを使っての「ながら運転」や電動アシスト自転車での歩道暴走など、これまで以上に危険な運転が目立っている。

それにより、車歩道の本来の役割が健全に機能せず、マナーに忠実な運転者や歩行者などの安全が脅かされている。自転車に対する“厳罰化”は、そうしたルール違反の自転車撲滅が目的だ。

スマホながら運転の反則金は1万2000円の想定

たとえば、信号無視をすれば反則金6000円、横断歩行者を妨害したら6000円、自転車の整備不良は6000円となっている。

昨今、特に目立ち、大きな事故にもつながるなど危険極まりないスマホや携帯を使用しながらの自転車運転。これについては、反則金も最も高い1万2000円が設定される見込みだ。いままでなら、「大丈夫だろう」とやってしまっていた人もいるかもしれない自転車の違法運転。これを機にその危険性を認識し、意識を改めた方がいいだろう。

青切符導入は”前科者”大量発生回避も

改正道交法で自転車も対象となる交通反則通告制度は、自動車や原付きを運転する人にはおなじみかもしれない。比較的軽微な違反行為であれば、反則金を納付することで原則、刑事手続きをしなくてよくする仕組みだ。

取り締まる警察にとっては違反行為とはいえ、軽微なものも全てを刑事手続きしていては人手が追い付かない。加えて、違反者全員を刑事手続きとすれば、“前科者”が大量発生することにもなりかねない…。こうした事情を勘案し、青切符制度は生まれている。

なお、自転車における青切符は、信号無視や整備不良など、自動車同様あくまでも比較的軽い交通違反がその対象。より悪質な違反行為、たとえば、酒酔い運転、酒気帯び運転は非反則行為として、交通切符(赤切符)が切られることになる。

反則金の支払いを拒否したらどうなる?

では、この青切符に不服で反則金を払いたくない場合に拒否したらどうなるのか。

「その場合は交通反則通告制度の適用を拒否したとみなされ、道路交通法違反事件として検察庁に送致されることになります」

こう解説するのは交通事故事件の実績が豊富な鈴木淳志弁護士だ。

鈴木弁護士が続ける。

「刑事手続きとなり、その結果、仮に起訴されると多くの場合、前科が付くことになるでしょう。反則金の支払いを拒否することにはそうしたリスクがあることは注意しておく必要があります」

うっかりも含め、結果的に反則金を納付しなかったらどうなるのか…。

「青切符を切られた日の翌日から7日以内に反則金を納付せず、なおかつ警察施設にも出頭しなかった場合、切符を切られた日からおおむね40日後に反則金相当額と郵送料を合わせた『納付書』が自宅に送付されます。この時点で納付すれば違反の手続きは終了します。もし、これも納付しなかった場合は、青切符の受け取りを拒否したときと同様、刑事裁判の手続きがとられます」(鈴木弁護士)

青切符導入後に注意すべきこと

青切符を巡っては、過去に警察官から青切符の署名を求められた際に、それを破いたドライバーが公務執行妨害の疑いで逮捕された事案が発生している。切符は公文書であり、破ると「公用文書等毀棄(きき)罪」に当たる可能性がある。たとえ不服だとしても冷静でいることが肝要だ。

また、青切符について河野太郎デジタル大臣が「任意だから」と「押印不要」とXにポストし、話題になった。警察官に求められた際、本当に押印を拒否してもいいのか。

「河野大臣が述べているとおり、押印は義務ではなく、押印しなかったこと自体に罰則はありません。ただ、違反の事実を争わず、反則金を納付する考えであるならば、あえて拒否する理由もないと思います」と鈴木弁護士は必ずしも従順である必要はないものの、誠実な対応をするに越したことはないと助言する。

実施は2年後とまだ先だが、自転車を足にしている人に迫りくる大きな転換点。最後に、改正道交法における心構えを鈴木弁護士に聞いた。

「道路交通法上、自転車は軽車両であり、自動車と同じ交通規制が適用されているものが多いです。青切符の対象となる行為は、信号無視、右側通行、一時不停止など、常識で考えれば交通違反だとわかり、危険だとわかるものが含まれています。基本的には難しく考えず、安全な運転を心がければ大丈夫ではないかと思います。

ただ、なかには意外と知られていない違反というのもあるかもしれません。そうした違反行為は導入時期が近づけば、報道されるでしょうし、警察からの周知活動も行われると思います。そのときには、交通ルールを再確認してほしいと思います」

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