地域に郵便局が復活! 局長は移住者の女性 「安心できる楽しい場所に」 長崎・新戸町

「やぎさんゆうびん」のデザインをあしらった外観=長崎市、新戸町簡易郵便局

 赤いシャッターに、白抜きの郵便マークと白ヤギと黒ヤギの絵が目印-。長崎市新戸町3丁目に3日、新戸町簡易郵便局がオープンした。局長は昨年夏、神戸市から移住した大西優香さん(43)。簡易郵便局を起点にしたビジネスでの起業を構想。魅力に引かれ移住を決めた長崎市で、地区内に約7年間郵便局がなかった新戸町での開業にこぎ着けた。「地域の人が集まって安心できる楽しい場所になれば」と目指す通り、3日は再開を待ち望んでいた住民が訪れ笑顔があふれた。
 大西さんは近畿地方で昨年まで17年間、金融機関に勤務。十数年前に長崎を訪れ、きれいなまちや魅力的な食べ物、人に心引かれた。「長崎の方のまっすぐな誠実さに触れて、いいとこだなっていうふうに思って」。それから毎年のように本県を訪れ、波佐見陶器まつりや長崎くんちなどを見物。「いつか移住できたら」と思うようになった。
 そんな中、起業を考えている人や事業主らを支援する「NAGASAKI起業家大学」(県産業振興財団主催)が受講者を募集していることを知った。転職するなら起業したいと考えており、金融機関に勤めてきた経験やスキルを生かし、簡易郵便局を起点にビジネスモデルを展開する事業計画で応募、採択された。

神戸市から移住し、新戸町簡易郵便局をオープンさせた大西さん

 2021年11月から5カ月間、働きながら月に1、2回長崎に通い、セミナーなどを受講。並行して日本郵便が簡易郵便局の受託者を募集していた中から、郵便局が閉鎖していた同地区に目を付けた。来崎時に訪れ、住民らに「郵便局をやろうかと思って」と声をかけると「ありがたい」「絶対やってほしい」という切実な声ばかり。閉鎖後、近隣の郵便局まで足を運ばなければならなくなり、住民は不便さを抱えていた。
 地縁はまったくなかったが、起業家大学のOB会の先輩や、国が設置している無料の経営相談所「県よろず支援拠点」などが後押し。金融機関を退職し家族で昨年7月、同市に移住。準備を進めて開業を迎えた。
 手紙を食べる白ヤギと黒ヤギの絵は、子どもから大人まで親しまれる童謡「やぎさんゆうびん」からデザイン。内外装は長崎の洋館をイメージしたミントグリーンを基調にした。今後は空きスペースを改装し、ワークショップなどもできたらと構想を膨らませている。
 近くの北早苗さん(70)は3日の開業後に早速訪れた。これまでは市中心部の郵便局までバスで行っており「近くで買い物もできてありがたい」と笑顔。近くで野菜などを販売する久松商店の久松ハルエさん(80)は「みんな喜んでいる。(大西さんと)一緒に頑張りたい」と話した。大西さんは「安心して住み続けられるまちづくりに自分も貢献したい」と意気込む。
 新戸町簡易郵便局は平日午前9時~午後5時営業(12月31日~1月3日を除く)。ATMはなく、一部取り扱いできない業務もある。

© 株式会社長崎新聞社