「監視カメラが増えている」中国の格安通販SHEIN、労働問題に改善なし

2008年創業、近年急成長を遂げている中国のネット通販大手SHEIN(シーイン)。同社の商品を生産する工場の過酷な労働環境について、スイスの人権擁護団体「パブリック・アイ」が2021年に報告し、非難した。

メディアでも報じられ、SHEINは従業員の待遇改善を約束していた。ところが最新の調査により、環境が変わっていないことが明らかになった。BBC が報じている。

*パブリック・アイのX「#Shein:一向に改善なし。私たちの衝撃的な調査から2年以上が経過した。商品の裁縫を担当する工場スタッフたちの週75時間労働、そして出来高ベースの給与がいまだに常態化していることが、新たな現場調査で明らかになった」*

平均12時間労働、低賃金…実態の改善なし

SHEINの特徴は、商品の安さにある。多様な商品を破格で販売しており、TikTokなどインフルエンサーの影響力を活用し、顧客を増やしてきた。

2021年の報告書 で、パブリック・アイは10人の工場スタッフに聞き取り調査をした。彼らは1日に11〜13時間、ほとんどの週で休みなく働いていたという。

時間外労働による賃金の割増もない。 手取りは良い月で1万元(約20万円)だが、悪い月はその3分の1にしかならないと証言した。

また、全員が正式な雇用契約を結んでいなかった。工場には非常口がなく、通路まで商品が詰まった袋で埋め尽くされており、「火災が起きても逃げ道がない」と書かれている。パブリック・アイは、調査を次のように結論づけた。

「SHEINサプライヤーの従業員たちは、最低限の安全も自由時間、QOLも犠牲にして働いているが、こうした働き方を受け入れているのは、そうするしかないと感じているためだ。SHEINのビジネスは、この事実を狡猾(こうかつ)に、全面的に利用して成り立っているのである」

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5月14日、パブリック・アイは再調査 の結果を報告した。初回とは別の工場で、23歳から60歳までのスタッフ13人を取材した。

結果、労働環境に改善はなく、取材に応じたスタッフたちは少なくとも週6日、多いときには7日、平均12時間働いていると答えた。給与も依然として出来高ベースで、月6000元から1万元(約13万円から20万円)で変動するという。

児童労働の可能性も指摘

加えて、スタッフたちは工場内の監視カメラが増えていると主張した。労働の様子がリアルタイムで会社に共有され、会社が生産性を常にチェックしているのではと述べている。

パブリック・アイは、工場に小さな子どもやティーンエイジャーがいることも指摘した。

「おそらく仕事を学ぶため、親の監視下で商品の梱包などの簡単な仕事をしたり、ミシンを使ってみたりしていた。彼らに報酬が支払われているかは不明だ」

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スペイン・マドリードに初めて開店した、SHEINの実店舗に並ぶ人々。2022年6月2日撮影。

パブリック・アイによると、SHEINは3つの監査法人に内部調査を依頼。「SHEINはサプライヤーの工場で働く従業員に適正な賃金を保証しており、その責任を明確に果たしている 」とホームページに調査結果が記載されたが、現在は削除されている。

SHEINの企業情報 や詳しい収益は、謎に包まれたままだ。150カ国以上での事業展開、19箇所のオフィスに1万1000人の従業員、スタイリストが4600人、サプライヤーの工場を5000箇所以上抱えているという点のみ明かされている。

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「改善に取り組んでいる」と主張も…

BBCへの声明で、SHEINは「サプライチェーン全体のガバナンスとコンプライアンスの強化のために」数千万ドルを投資していると述べたが、実態は異なるようだ。

同社は2021年9月、初めてサプライヤー行動規範 を公開。スタッフの労働時間は残業を含め週60時間以内に収めなければならず、少なくとも週1日の休暇を取らなければならないと書かれているが、今回の調査結果と整合していない。

担当者は「労働時間は自主的なものであり、労働者は公正な報酬を得ている」と強調し、「サプライヤーの慣行を改善するために積極的に取り組んでいる」とBBCに語った。

パブリック・アイは、労働環境の改善に政治的な介入が必要だとしており、「外部からの圧力なしには、SHEINがより大きな社会的責任を負うことはないだろう」と報告している。

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