9歳の女の子が死亡 一般道を時速120キロで走らせた医師の男に執行猶予付きの有罪判決 裁判官「実刑の選択も視野に入る事案」と指摘 広島地裁福山支部

広島県福山市で2022年、軽乗用車にスポーツカーを衝突させ、当時小学4年の女の子を死亡させるなどしたとして過失運転致死傷の罪に問われている医師の男(37)の裁判で、広島地裁福山支部は4日、男に禁錮3年・執行猶予5年の有罪判決を言い渡しました。

事故は22年6月18日夜に起きました。午後8時25分ごろ、福山市霞町1丁目の最高速度50キロの道路で、男はスポーツカーで時速およそ120キロで走行し、交差点で対向車線から右折していた軽乗用車と衝突。軽乗用車に乗っていた女の子(9)が事故の衝撃で車の外に投げ出され死亡し、軽乗用車を運転していた女の子の祖父と、歩道上にいた男性も大けがをしました。

これまでの裁判で、男がスポーツカーを高速で走行させていたのは、事故があった日だけではなかったことが明らかになりました。

検察によりますと、男は18歳で運転免許を取得して以降、3度にわたって速度違反での取り締まりを受けていました。

事故を起こしたスポーツカーを購入したのは、事故の約1か月前。「鑑賞用」で「実用性に向かないので、たくさん乗るためではなかった」といいます。しかし、検察側は、男が知人とのドライブなどでも高速で運転を繰り返していたと指摘しました。

事故当日、男は喫茶店に行くため、制限速度を70キロ上回る時速120キロまで加速させ、交差点に進入しました。対向車線から右折する軽乗用車に気がつき、急ブレーキをかけましたが、間に合わず軽乗用車と衝突したということです。

黒のスーツ姿で入廷 男は緊張した面持ちで判決を待ち…

検察側は5月21日の論告で、大幅な速度超過による「男の過失の度は大きい」と指摘。「女の子は、事故の当時も楽しみにしていたお祭りに行くため、祖父の運転する軽乗用車に同乗していた。突然、命を奪われ、その苦痛や無念さは察するに余りある」などとし、禁錮3年を求刑しました。

一方、弁護側は「双方とも青信号で、右折車両は直進車両を待たなければならないのだから、被害者側にも過失が少なからずあり、亡くなった女の子は後部座席でシートベルトはしていなかった」と指摘。加えて、運転免許は取り消し処分になり、再犯の可能性もないなどとして、執行猶予付きの判決を求めていました。

そして迎えた判決の日。男は黒のスーツ姿で入廷。緊張した面持ちで、うつむいたまま静かに判決を待っていました。

広島地裁福山支部の 松本英男 裁判官は「指定最高速度の2倍以上の速度で走行させ、過失の程度は大きい。1人を死亡させ、2人に重傷を負わせた結果は誠に重大」とし「実刑の選択も視野に入る事案であるといえなくもない」と述べました。

一方で、「交差点を右折するにあたり、直進してくる車を十分に確認しなかったことなど対向車側の事情も結果に影響を及ぼしているとみることができる」と指摘。「被告人の過失に対しては厳しい非難は免れないとしても、直ちに実刑に処することは躊躇される」などとし、禁固3年・執行猶予5年の判決を言い渡しました。

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