支援の酒完成、再建へ一歩 奥能登の酒造会社、ブレンドや共同醸造

車多酒造と櫻田酒造の酒がブレンドされた「能登大慶×天狗舞」=白山市内

  ●櫻田酒造(珠洲市)×車多酒造

  ●鶴野酒造店(能登町)×福光屋

 石川県内の酒造会社で、能登半島地震による被害を受けた奥能登の酒造会社と共同醸造していた日本酒が続々と完成している。車多酒造(白山市)では蔵が倒壊した櫻田酒造(珠洲市)とのブレンド酒、福光屋(金沢市)で鶴野酒造店(能登町)の酒がそれぞれ仕上がった。被災各社は新たな酒の完成を励みに、酒蔵再建に向け意欲を新たにしている。

  ●「救出」の酒米使い

 車多酒造と櫻田酒造が共同醸造した酒には「能登大(たい)慶(けい)×天狗舞」と名付けた。櫻田酒造の蔵から無事見つかった酒米を使い、車多酒造で再び精米して醸造した同社の銘柄「天狗舞」と、珠洲でビンに入った状態で発見された櫻田酒造の銘柄「大慶」をブレンドした。軽やかですっきりした味わいに仕上がったという。

 酒造りの工程では、櫻田博克社長も車多酒造の蔵人に交じって、糀(こうじ)作りやタンクに入ったもろみをかき混ぜるなどの作業に励んだ。「大慶」は豊漁を意味することから、ラベルに天狗が大漁の魚を持つイラストを添えた。櫻田社長は「支援には感謝しかない。2年以内に珠洲で蔵を再建させたい」と意気込んだ。

 今月3日に発売し、利益は櫻田酒造の再建支援に充てる。白山市坊丸町の車多酒造カフェ「クラフト サケ ショップ mau.」や同社オンラインショップ、石川県内外の酒販店で扱う。車多一成社長は「能登の酒が販売されていれば、積極的に飲んで応援してほしい」と話した。

  ●杜氏がコラボ

 福光屋では鶴野酒造店の特別純米生原酒「谷泉(たにいずみ)」が完成した。がれきの下から見つかった酒米、福光屋の水や設備を使い、両社の杜(とう)氏(じ)が共同して醸造。フレッシュな味わいに出来上がり、うま味や豊かな吟醸香を楽しめるという。

 720ミリリットル入りは千本、1.8リットル入りは300本を用意した。10日から鶴野酒造店の販路を使って県内外の酒販店で販売する。14代目蔵元の鶴野晋太郎さんは「今年は酒造りができるとは思っていなかったので、感謝でいっぱい。多くの支援で前を向くことができ、酒造りを続けていきたい」と喜びを語った。

 このほか、両社がそれぞれ使っている酵母で造った酒や、互いの銘柄のブレンド酒も、今月下旬から順次発売する予定だ。福光太一郎専務は「石川の酒を守っていくため、継続して協力していくことが大切だ」と話した。

 元日の地震では奥能登の酒造11社が被災した。県酒造組合連合会の呼び掛けもあって、県内の同業各社が共同醸造を名乗り出たり、設備を貸し出したりするなど支援が行われている。

 「能登の酒を止めるな!」を合言葉に全国の酒蔵が参画する共同醸造プロジェクトも展開されており、ネット上で寄付を募るクラウドファンディングで酒蔵再建を後押ししている。

福光屋の設備でビン詰めされる鶴野酒造店の「谷泉」=金沢市内

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