心配りの発車合図(6月5日)

 県内のある駅の「みどりの窓口」を訪れ、小さな異変に気付いた。カウンターに置いてあった長方形の小さな紙袋が消えている。受け取った数枚の切符を収めるのに、重宝していたのだが…▼小袋の廃止は、インターネットやスマホを介した鉄道利用を促す一環という。同様の理由からだろう。3年前には、みどりの窓口を減らす方針が打ち出された。新型コロナ禍で減っていた利用者が戻り、混雑する場所が出たため計画は見直されたと伝わる。乗り継ぎや料金を対面で確認したい人は少なくない。業務改革の発車信号は「青」に切り替わらなかった▼JR東日本のサービスは、鉄道事業を超えて広がる。ネットを介した銀行業を先月始めた。画面越しに口座を開設して一定の条件を満たせば、割引の優待券やクーポンがもらえるのはうれしい限りだ。お得な特典は大きな話題をまいたが、端末操作が不得手な世代はどうしたものか▼東北新幹線は、接続する在来線の列車に遅れが出ると、停車駅で到着を待つ時がある。優しい心配りに、ほっこりする。デジタルという名の超特急に乗り遅れがちな「乗客」もいる。その存在にも心を配るゆとりがあると、ありがたい。<2024.6・5>

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