【霞む最終処分】(45)第8部 デブリの行き先 説明会で工法周知 所在・総量「推測の域」

 延期が繰り返されてきた東京電力福島第1原発2号機からの溶融核燃料(デブリ)の取り出しが早ければ8月にも再開される。一方、原子炉建屋が水素爆発した3号機を巡っても、新たな動きが出ている。原子力損害賠償・廃炉等支援機構(NDF)は今月、取り出し工法の説明会を県内で開く。9日の福島県田村市と広野町を皮切りに、避難指示が出るなどした13市町村を29日までに巡る力の入れようだ。

 福島第1原発の廃炉作業の中でも、放射線量が極めて高いデブリの取り出しには、技術的に困難な課題が多く横たわる。取り出し開始が近づくタイミングでNDFが被災地に出向いて説明の場を設ける背景には、処理水の海洋放出を決定するまでの過程で国民の理解が十分に得られなかった―との廃炉に携わる組織としての思いがある。

 取り出し工法の検討を主導したNDFは取り出し開始に際し、性質や安全性に社会の理解を得ながら作業を進める姿勢を示している。説明会ではこうした考え方を紹介し、廃炉全般についての疑問を受け付ける。

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 ただ、説明する工法そのものが専門的な用語を含む。原子炉内の状況やデブリの性質には解明されていない部分も多いだけに、正確な理解につながるかは不透明だ。延期やトラブルによって生じた県民の不信感をこれ以上、招かないためにも、できる限り分かりやすい情報発信が重要になる。NDF廃炉総括グループ執行役員の太刀川徹は「言葉遣いなどをかみ砕いて、正確な情報が伝えられるように努めたい」としている。

 NDFは取り出し工法の提案に向け、前原子力規制委員長の更田豊志をトップとする「デブリ取り出し工法評価小委員会」で約1年をかけて最適な選択肢を検討した。3月に公表した報告書では、候補とされていた三つの工法のうち、空気中でデブリを取り出す「気中工法」を基本路線に据えた。充填(じゅうてん)材で固めて削り出す「充填固化工法」を部分的に取り入れられるかを探るべきだと提言。建屋を構造物で囲って水没させる「冠水工法」は将来的な採用の可能性を見据え、建屋の地下構造を調査するように求めた。

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 東電によると、3号機のデブリは原子炉圧力容器内部には少なく、ほとんどがより下部の格納容器に溶け落ちたとみられている。デブリの在りかや総量はあくまで推測の域を出ない。更田も「どこにどれだけのデブリが、どんな形であるのかが分かっていない」と得られている情報の量や確度の乏しさを認めている。

 原子炉建屋内は福島第1原発の構内でも放射線量が極めて高い。気中工法は、全ての工程を遠隔で行う必要がある。原子力や土木、建築など各分野の専門家10人による小委では一部の委員から遮蔽(しゃへい)性の高い水を用いる冠水工法を推す声もあった。全会一致の結論とならなかった辺りに、最難関とされるデブリを取り出す道のりの険しさがにじむ。(敬称略)

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