元助っ人スアレスが高回転4シームを武器にMLB屈指のクローザーへ台頭「まるで瞬間移動しているみたいだ」<SLUGGER>

ソフトバンク、阪神で活躍し、日本のファンにもおなじみのロバート・スアレス(パドレス)が絶好調だ。

開幕からクローザーに抜擢されると、ここまでリーグ2位の17セーブを挙げて失敗は一度もなし。5月は12試合に登板して7セーブ、防御率0.73の好成績でナ・リーグ月間最優秀救援投手に選出された。

今季のスアレスは、これまでとピッチングスタイルを大きく変えている。主要3球種(4シーム、シンカー、チェンジアップ)の昨季との投球割合の変化を見てみよう。

4シーム 38.1%→79.3%
シンカー 22.9%→12.1%
チェンジアップ 33.6%→8.5%

シンカー、チェンジアップの割合が劇的に低下し、全体の実に8割近くを平均98.6マイル(158.7キロ)、最速101.5マイル(163.3キロ)の4シームが占めている。

米ウェブメディア『ジ・アスレティック』の記事で捕手のカイル・ヒガシオカが「今どき、高校生だってこんなに投げない」と半ばあきれたように語るほどの多投ぶりだが、これはルーベン・ニーブラ投手コーチの助言によるもの。高回転数でホップ成分が多い4シームを高めに投げ込むことで、多くの空振りを奪っている。ここまで4シームの被打率はわずか.129、24奪三振のうち、実に19を4シームで仕留めている。 かつて“人類最速男”アロルディス・チャップマン(現パイレーツ)ともバッテリーを組んだヒガシオカによると、全身をフルに駆使していたチャップマンと比べて、スアレスは軽々と投げているように見えるとのこと。にもかかわらず、威力十分の速球が投げ込まれることから、もう一人の捕手ルイス・キャンプサーノは「まるで(マウンドから)ミットに瞬間移動しているみたいだ」と驚嘆する。

一方、スアレス本人は『MLBネットワーク』の番組で好調の秘訣を「入念な準備」と説明。そしてそれは、日本にいた頃に学んだ「規律の重要さ」に基づくものだとに語った。

ベネズエラからメキシコを経て日本で6年間プレーし、31歳でようやくメジャーリーグにたどり着いた苦労人。キャリアの基礎を築いた日本での日々が、現在の活躍の糧となっているようだ。

構成●SLUGGER編集部

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