UAゼンセン調査/流通・サービスの組合員46.8%がカスハラ被害に

UAゼンセンが6月5日に発表した「カスタマーハラスメント(以下:カスハラ)対策アンケート調査」(第3回、速報値)によると、直近2年以内に、回答者の46.8%(1万5508件)が迷惑行為被害にあっていることがわかった。

<46.8%がカスハラ被害に>

同アンケートは、2024年1~3月、UAゼンセン所属組合のうち、流通・サービス関連の組合員に対し実施した。回答組合数は210組合、回答件数3万3133件となっている。

2020年に実施した第2回調査時の56.7%と比較すると、10ポイント近く減少しているものの、依然として2人に1人はカスハラ被害にあっている。

業種別ではドラッグストア6654人中3770人(56.7%)、パチンコホール1211人中628人(51.9%)、専門店748人中383人(51.2%)、家電量販店1398人中709人(50.7%)、ホームセンターなど住生活関連4948人中2434人(49.2%)の順で、被害にあった人の割合が高かった。

<松浦勝治 政策政治局長>

松浦勝治 政策政治局長は、「UAゼンセンとして2015年から本格的にカスハラ対策に取り組んできた。カスハラ被害に対する世間の理解は広がっている。今後、この調査結果を生かし、カスハラ対策の法制化の必要を訴えていきたい」と説明した。

■カスハラによる従業員の精神的ダメージ懸念、加害者の7割が男性

<主なカスハラ行為>

カスハラ行為は、「暴言」(39.8%)、「威嚇・脅迫」(14.7%)、「何回も同じ内容を繰り返すクレーム」(13.8%)となっている。

第2回調査時に比べ、「長時間の拘束」(2020年7.8%→2024年11.1%)、「セクハラ行為」(2.3%→3.7%)、「SNSインターネット上での誹謗中傷」(0.3%→0.8%)が増加している。また、被害報告があった約1万5000件のうち、「寝不足が続いた」193件、「心療内科に行った」123件という声があがっており、カスハラの精神への悪影響、健康被害が懸念される。

<迷惑行為体験後の心身への影響>

カスタマーハラスメントのきっかけとしては、2020年同様、「顧客の不満のはけ口・嫌がらせ(26.7%)」「わからない(17.3%)」「消費者の勘違い(15.1%)」で半数以上を占めた。

<迷惑行為のきっかけ>

また、迷惑行為をしていた顧客を性別でみると、男性70.6%(1万945件)、女性27.1%(4210件)だった。

<迷惑行為をしていた顧客の性別>

年代別でみると、10代0.1%(22件)、20代1.8%(274件)、30代6.8%(1059件)、40代15.6%(2420件)、50代27.2%(4221件)、60代29.4%(4557件)、70代以上19.1%(2955件)で、50代以上の迷惑行為が目立っている。

<ドラッグ関連での被害が多い>

さらに、業種グループごとにカスハラの実情を分析すると第1グループ(GMS、スーパーマーケット、ドラッグ関連)ではカスハラ行為者は60代男性中心で、対応者は女性が多い。上司の謝罪などを要求されている。全グループの中でも、対応策がもっとも検討されていない可能性があるという。

第2グループ(インフラ、ホテル・レジャー、家電、生活サービス、百貨店)は、カスハラ行為者は50代男性が中心で、理詰め、揚げ足とりなどで1時間以上カスハラ行為が続くことが特長。

第3グループ(フード、フードサービス、住生活関連、専門店)は、カスハラ行為者として女性が多く、対応者は男性の割合が高い。人格否定や威圧的な言動も多く見られる。

<フードサービスで1258件の被害報告>

第4グループ(パチンコ、医療・介護・福祉)はカスハラ行為者として60代・70代が中心で、被害回数が多く、被害期間も長い。セクハラ被害の割合も他のグループより大きくなっている。

<佐藤宏太流通部門執行委員>

佐藤宏太 流通部門執行委員は、カスハラ行為者に男性が多い傾向について、「60~70代はサービスに求めるレベルが高く、店舗側に対し『教えている』『相手のためを思っている』と考えており、自身の行為がカスハラに当たると思っていないのではないかと推測している」と述べた。

■マニュアル作成、トップの毅然とした姿勢が従業員の安心に

<企業のカスハラ対策>

企業の対策は、「マニュアルの整備(28.6%)」「専門部署の設置(23.4%)」「迷惑行為対策への教育(21.0%)」「被害者へのケア(9.2%)」などの取り組みが若干増加した。一方、「特に対策はなされていない(42.2%)」が最も多かった。

佐藤氏は「カスハラ対応の時間や方法を明確化したマニュアル作成に加え、企業のトップがカスハラ防止に毅然として取り組む旨のメッセージを発信することが従業員の安心、カスハラ対策につながる」と訴えた。

<波岸孝典流通部門事務局長>

波岸孝典 流通部門事務局長は「クレームは貴重な情報源であるという考えのもと、業務改善などに生かしてきた歴史がある。しかし、社会通念を越えたカスハラは働く人の人格や尊厳を損なうものであり、身体的・精神的苦痛だけでなく、業務パフォーマンスの低下、健康不良も招く。事前の予防として、カスハラ被害の明確化、世の中に対策の必要性を浸透させることが最大の防御だと思っている。これからもカスハラ対策の重要性を周知していきたい」と話している。

取材・執筆 鹿野島智子

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