【インタビュー】AKi、4年ぶり3rdアルバムにありのままの姿「シドの物語のスピンオフであり俺のストーリー」

シドの明希(B)によるソロプロジェクトAKiが、約4年ぶり3枚目のフルアルバム『Free to Fly』を6月5日にリリースした。原点にある骨太でダイナミックなハードロックを軸としながら、エレクトロ、パンク、ポップと多彩なジャンルを取り込んでまとめ上げる鮮やかなソングライティング手腕を発揮した作品の完成だ。

アルバム『Free to Fly』の歌詞の言葉選びは驚くほどに自由で、例えば、世を騒がせた“ギターソロ飛ばし”の風潮をモチーフとしたユーモラスな社会風刺から、“シドの明希”としての葛藤の歴史に至るまで、様々なテーマと向き合い、伸びやかな筆運びで綴っている。各曲に込めた想い、この自由なアルバムに辿り着いたビハインドストーリーを、じっくりと語ってもらった。

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■自分が見た夢の中にファンが居てくれる■その奇跡がまだ続いているのもすごい

──約4年ぶりのフルアルバム、完成した手応えはいかがですか?

AKi:ソロを始めた時に、まず“自分はどんなものをやりたいんだろう?”ということを確認するイメージで、どんどん扉を開けていったのが1stアルバム(『ARISE』/2015年)で。自分はハードロックの様式美に憧れていたので、思い切りそこを体現したのがコロナ禍の時期に出した2ndアルバム(『Collapsed Land』/2020年)だったとすると、3枚目の今作『Free to Fly』はもっと素の自分というか、今の自分のテンションに近いものができたかなと。ある程度長く、ソロ活動を10年近く続けてきて、とらわれるものもどんどんなくなってきた。

──まさしく“Free”な状態になってきた、と。

AKi:例えば、歌詞も昔は“この言葉を使ったら悪いんじゃないかな?”とか実は思っていたんですけど、今は迷いがなくなって。自分の中から出てきた言葉で、自分のものとしてしっかりと歌って伝えていきたいと思ったんだったら、それを書こうと。だから、いい意味で成長…とは自分で言いたくないんですけど、作家らしく、昔よりは作品のつくり手らしくなれたのかな?というのはあります。

──アルバム制作に向けて始動したのはいつ頃だったのですか?

AKi:構想自体は去年ですかね。今年1月に「Salvation」を配信リリースして、その前に「OVERRUN」(2022年6月)という曲をリリースしたんですけど、この2曲を中心に“またアルバムを構成したいな”と思ったんです。で、いろいろな曲を書いている中で、今回の表題曲ができてきたという流れです。

──表題曲の「Free to Fly」は、エレクトロでエフェクティヴな冒頭が面白いですね。

AKi:いろいろな人の声が聴こえるようなイメージで、声も思い切り加工しています。僕は曲先でつくるんですけど、サビのメロディーはいつもの感じで出てきて、“リフもちょっと面白くしたいな”と思ったり。基本的にハードロックサウンドなんですけど、例えば、それとデジタルなものをミックスしたり、パンクをミックスしたりとかいう楽曲もある中で、今回はちょっとオリエンタルな感じにしたいなって。聴いて一発で引き込めるようなリフが欲しいなと思ってつくって、音で遊ぶようなイメージでしたね。その辺から構築していって、メロディーは何度も変えたんですけど。

──サウンドだけでなく、社会風刺的な歌詞に目を惹かれます。

AKi:生意気にもそんな感じになっていますね。楽曲ができてから“歌詞をどうしようかな?”と考えていたら、ネットニュースか何かで、最近の若い人たちはギターソロを飛ばして聴いちゃうとか、イントロを飛ばして3秒ぐらいしか聴かなかったりする、という記事を見て、“今ってそんななんだ!?”とびっくりしたのと、ちょっと悲しい気持ちになったのと。それがきっかけでこういう歌詞になりました。

──バンド文化を愛する人間にとっては、ショッキングなニュースでしたよね。

AKi:我々の表現したいものって、イントロとか間奏とかギターソロとか、ベースで言えばアウトロの終わり方のニュアンスであって。そこにこそ楽しいものとか、ときめくものが散りばめられているのにって思いますよね。ケーキを食べる時にイチゴだけしか食べないみたいなことで。知った気になったようなカルチャーの触れ方って、すごくもったいない気がするんです。でも、そういう人たちに対して「ダメだ」と言うんじゃなくて、「こっちに来たらもっと面白いのに。もったいないね」って。否定や嘲笑ではなく、目を閉じて触るだけじゃなくて、目も開けて触った先に何かないかと確かめる、そういう気持ちを忘れないでほしいなという想いで書きましたね。

──「Salvation」のアウトロ約50秒間のセッションは圧巻でした。これがカッコいいんだ!と断言するように、堂々と振り切っていて。

AKi:“「ギターソロを聴かない」と言うなら、俺の曲ではギターソロを2回ぐらい弾き倒してやろう”くらいに思っていました(笑)。面白い曲にしたかったし、ライブハウスらしい盛り上がりをつくりたい、という想いからできた曲だったりもします。バンドをやってる人にはこの曲をぜひコピーしてほしいです。僕が思うに、名曲ってシンプルでカッコいいんですよ。例えばTHE BLUE HEARTSの「リンダリンダ」もそうだし、LUNA SEAの「TONIGHT」とかもそう。ギターとかベースフレーズとかも全部シンプルでいい曲で、めちゃくちゃ盛り上がるので。僕もそういう発想から曲をつくってみたいなと思っていました。

──その他の曲たちは、どのような順番で生まれたのですか?

AKi:完璧には覚えていないんですけど、「Devotion」は最後でした。あと、シドの「smile」(2007年)ぐらいの頃からあった原曲を持ってきてみたのが、「The Same Dream」です。コードとギターリフとメロディーは残ったんですけど、テンポもリズムも違いますし、全然違うものになりました。

──青春感のある熱い曲で、“♪向かい合わせで 歌っていた”という、ライブの情景が浮かぶ歌詞にはドラマを感じます。どのようなイメージで書かれたのでしょう?

AKi:僕、今年43歳になったんですけど、いよいよ“あと何回ライブができるのかな?”とか…終わりを仄めかす意味ではないですけど、“いつまでバンドをやれるのかな”みたいなことを考える入り口に立ったのかなと思っていて。だから、ライブ1本1本を噛み締めたり、今までやってきたことの重さとか想いもすごく気になってきたりして。それを歌詞にしました。ずっとバンドを続けてきて、途中で辞めてしまった奴や、解散したバンドを幾つも見てきたし…そういう中でシドはまだ活動できていて、21年続けていますし、僕のソロもそろそろ10年近くになるので。

──青春を懐かしむ曲ではなく、これからの1本1本を悔いなく刻んでいこう、という決意の曲なんですね。

AKi:そうですね。出会ったファンの人たちが、自分が見た夢の中に居てくれているわけで。“バンドをやりたい” “有名になりたい” “ライブをやりたい”という夢を抱いて始めて、まだその奇跡が続いているのもすごいなと。そんなことを思いながら書きました。

──「Bluffing」も、ギターリフからのベースソロ、そしてギターソロへと畳み掛ける展開が痛快です。

AKi:結構前から原曲はあったんですよ。リフもので、ちょっとアダルトな雰囲気な曲もあってもいいな、と思ってつくった曲です。

──この曲の冒頭は、地下のクラブで、扉の向こうから音が聴こえてくる情景が目に浮かぶようなサウンドだなと感じました。

AKi:その通りです。ライブが始まって扉を開けて、バーン!と見えてくるような状況ですね。

──そういったアレンジやサウンドの構築は、AKiさんが全部ディレクションされているんですか?

AKi:そうですね。基本的にサポートギターの加藤(貴之/Guitarist, Composer, Arranger)くんが、僕の思ったことを具現化してくれます。二人でアレンジを詰めていって、例えばDAWなどの実作業をするのは加藤くんなんですが、僕は後ろで「こういうフレーズがいい」「こういうコードで」とか、やり取りしながらつくっています。ミックスもマスタリングも二人でやっていて。今回のマスタリング作業なんて、三回ぐらいやり直しました(笑)。

──そういった細かく突き詰める作業は、AKiさんにとって喜びなのでしょうか?

AKi:喜びですね。なんか発明しているみたいな感覚です。

──スタジオが実験室みたいな感じなのですか?

AKi:そうそう、そんな感じです。

■僕にとっては辛かったメジャーデビュー■その時の気持ちを初めてここまで書けた

──2曲目の「ODYSSEY」は疾走感に満ちたロックナンバー。どのような想いから生まれたのですか?

AKi:曲自体は割とストレートなロックで、このままシングルカットできそうな曲でもありますね。アルバムの表題曲とは別の、もう一曲強い楽曲というか盛り上がる曲をつくりたいなと思って。

──歌詞もストレートで、“♪自分自身を無くさない様に” “♪衝動的なフレーズ忘れてないかい? そこにいつも答えはある”といったフレーズは、決意表明のように聞こえます。スムーズに書き進められたのでしょうか?

AKi:ストーリーが見えていたので、書きやすかった曲ではありますね、時間が掛かっていなくはないですけど。シドでメジャーデビューして以降、ベストアルバムが1位になったとか、東京ドーム公演をしたとか、「モノクロのキス」(メジャー1stシングル/2008年10月)がめっちゃ売れたとか。そこだけを見ると“ただただ上手くいっているバンド”みたいに思われるかもしれないですけど、その裏では、僕にとっては割と辛かったメジャーデビューで。せっかく本当のステージに立ったのに、“俺、何もできてねぇや”みたいな。そんな悶々とした日々が実は続いていて、その時の気持ちを書いたものです。だから、出だしの“モノクロ”とは「モノクロのキス」のことで。シドのストーリーのスピンオフというか、俺のストーリーみたいな歌詞なんです。

──そのような葛藤や無力感を作品として表現したことはこれまでなかったんですか?

AKi:シドだと歌詞を書くのは僕じゃないので。インタビューとかで答えたことが、WEBとか本とかに載ったことはあるかもしれないですけど、ここまで書けた歌は初めてですね。

──このタイミングで書けたのは何故だと思われますか?

AKi:うーん、なんででしょう? 曲に呼ばれたんですかね。エネルギーのある曲だから、そういう気持ちをどこかで思い出したのかなと思います。

──内面の深い部分を、曲に乗せてファンの皆さんに伝えることにためらいがない、今だったらできるということもありますか?

AKi:そうですね。冒頭に言った「こういうことを書いたらカッコ悪いかな?」みたいなことがなくなって、いい意味で“俺は俺だし”と開き直っているというか。そうすると一気に視界が晴れて、使える言葉が増えていったんですよね。今まではどこかロックの様式美みたいな、カッコ良く聴こえる言葉を選びがちだったので。もちろん、未だに僕はそういうのも大好きですし、それはそれでいいと思ってますけど。

──自由というものの幅が広がったということですよね。「Devotion」は最後につくられたということですが、幕開け感のある神秘的な曲です。

AKi:曲を並べた時に“1曲目がないな”と思って、オープニング感を意識してつくりました。

──生々しい姿を1曲目でいきなり見せるのではなく、ヴェールをまといながら始まるのがいいですね。

AKi:まさにそうです。サウンドもデジタルな世界観との面白い融合性ができたかなと思っていて、イントロは結構気に入っています。

──冒頭はシンセを駆使していますね?

AKi:はい。その後でギターが入るんですけど、ギターもちょっと変な加工をしてみたり、変なワウを掛けてみたり。そんなトリッキーな曲です。

──「Devotion」だけではないですが、歌詞は全編英語の曲です。

AKi:まずイメージを日本語でつくって、英詞にしていただける先生と一緒につくっていく感じですね。

──アルバムを締め括る「Only One」は、2023年にツアーで披露されたロッカバラード。ドラマティックで、特別な想いが込められていると窺えます。

AKi:コロナ禍で生まれた曲でした。無観客ライブをしなければいけなかったり、ライブに来てもらっても頭を振っちゃダメとか声を出しちゃダメとか、キャパの半分しかお客さんを入れられない状況が続いて。手を広げて隣の人とぶつかる距離がダメだったりする制約の中、それでも応援しに来てくれた人たちの気持ちがすごく伝わってきて。それを思って書いた曲です。

──今ではコロナ禍のライブ会場の規制が撤廃され、失われていた自由を取り戻したわけですけれども。AKiさんは不自由だったコロナ禍の3年間に、ファンの方たちとの心の距離を縮め、結び付きを強くしたのでしょうか?

AKi:そうですね。コロナ禍で変わったこと、逆に生まれたこともあるなと思っていて。コロナ禍で配信ライブをよくやらせてもらって、すごくスキルアップにも繋がったんですよ。スタジオというライブ環境だとか、目の前にファンがいない中でのライブ運びだったり、MCでは画面の向こう側で観てくれている人たちに向かって、何をしゃべるのかだったり。初めての経験だったけど、あの時にいろいろチャレンジしておいて良かったな、と今思います。僕のオンラインサロンもコロナ禍があって始めたことだし、そういう意味では、奇しくも自分の進化に繋がった3年だったなと思います。

──AKiさんの歌声は、ソロ1stアルバムの頃からエモーショナルだった印象ですが、情感がより豊かになっていると感じます。ヴォーカリストとして今作でチャレンジしたこと、意識なさったことはどんなものですか?

AKi:歌っている以上は、“ヴォーカリストだ”という気持ちが自分にちゃんとなきゃいけないってもちろん思うんですけど、“ヴォーカリストだ”と僕が言うのは、ヴォーカリストの方々に対しておこがましいところもあって。日々鍛練、もうそれだけです。練習もそうですし。要は楽器を知るのと一緒で、“どこまで歌い込めば自分は一番いい声が出る瞬間を迎えるんだろう?”っていうところを探したりとか。例えば、歌って1時間後が良い状況になるんだったら、本番でそこにピークを持っていくようにメンテナンスするので、そういうことも含めてですね。逆に“どこまでやったら壊れちゃうんだろう?”とか、やっぱり自分の持っているいろいろなものを知ること。必死に勉強するということしかしていないです。

──ヴォーカル&ベースとしてのステージングは華麗ですし、それこそギターソロを飛ばして聴かれるなど、ロックバンドの肩身が狭い世の中に対して、“こういう楽しい世界、楽しい音楽があるよ”と体現されていると感じます。

AKi:うん、そうですね。そういうところに我々のこだわりは詰まっているので。

──レコーディングにおいて、ベーシストとしてこだわった点や挑戦したことは何ですか?

AKi:サウンド面では、ザックリ言うと、より良い音。振り返った時に“衝動がある音”を目指しました。“俺、こんなベースの音を聴いて“バンドやりてぇ!”って思ったんだよな”みたいな。そういうカッコいい音を目指して、自分の中にある音を忘れないように意識して。まずそうやって音をつくってから、自分のスキルとか自分の気持ちいいポイントをどんどん見つけていくという感じでしたね。今回は影丸(-真天地開闢集団-ジグザグ)くんがドラマーで、MOTOKATSU (ex. THE MAD CAPSULE MARKETS, ACE OF SPADES)さんも叩いてくれているんですけど、彼ら二人のニュアンスとかグルーヴをいっぱい掴んで、良いテイクを出せるように心掛けました。

──ギターに関してはどうでしょうか?

AKi:今回も加藤くんが全部弾いています。彼とはシドよりも長い付き合いなんですよ。

▲アルバム『Free to Fly』
──ソロ活動は2015年に始まり、10年目に突入しています。ソロを通してAKiさんが得ているものは何だと思われますか?

AKi:広く言うと、今、音楽的な部分でのストレスが自分の中になくて、ゼロなんですよ。音楽とかライブもそうですけど、いろいろなことを経験してきて。シドだけだと、“もっとこういうことを試したい”というアウトプットが自分の中に足りないということもある。シドとは別に、自分が思うものを吐き出すためのもう一つのアウトプットがソロなんですね。やりたいこととか試したいことは、もちろんシドとかいろいろな場面でも試したりするんですけど、やっぱり自分のソロでもできることによってフラストレーションがなくなってくる。逆に言えば、ソロで“これいいな”とか“すごい発見だな”みたいなことをシドにどんどん持っていく、という感じですね。

──ソロ活動が、シドに良いフィードバックを与えている、と。

AKi:細かいことを言えば、僕の音とかShinjiの音とか「もっと良い相性のサウンドって、お互いないのかな?」みたいな話をしたり。それはソロでいろいろなギタリストとやるからこそ、「こういうギターだと、こういうベースサウンドを出したら相性がいいんだ」とかの発見があったり、機材も含めて細かいところまでいろいろな経験や追求ができるからで。バンドってメンバーが決まっているじゃないですか。それはもちろん素晴らしいことなんですけど、やっぱり外に出て勉強することは、ミュージシャンにとってすごく必要だなと気付きましたね。

──シドというバンドを客観的に観ることも、大きなものだったでしょうね。

AKi:自分が歌うようになってから、マオくんの気持ちというか、ヴォーカリストの気持ちとか置かれている環境が、もっともっと理解できるようになりましたし。ソロをやったことで自分のバンドへのリスペクトが非常に高まりました。“あ、自分のバンドってすごいんだな”ということが改めて分かるというか。自分にとって、ヴォーカル&ベースという場面もあれば、ベーシストという場面もある、ということが非常にバランス良くて、幸せです。いちベーシストとしても表現できる場所があって、自分がバンマスで歌も歌詞もメロディーも全部つくって、ベースも弾きながら歌うバンドもある。ミュージシャンとしてはとてもバランスがいいと思ってます。

■僕の根底にあるのは単純に言うと■“ロックってカッコいいんだよ”ということ

──では、ソロ活動は良いこと尽くしですかね?

AKi:はい、めちゃくちゃそうですね。最近は、それがファンの方々にもすごく伝わっていて、とてもうれしいです。最初はソロ活動に対して否定的な声もあったんですよ。ソロを始めると「解散しちゃうんですか?」とか、不安になってしまう人たちもいるらしくて。でも、その気持ちもすごく分かるんですよね。それだけシドを愛してくれているから、応援してくれているから、不安になるのであって。最初はただただ“えっ? そんなふうに受け取らないでよ、なんで?”と思っていたけど、そう受け取られる理由を深く探ると、やっぱりシドを純粋に好きだからなんだなって。

──AKiさんとファンの方々との相互理解が深まっていったんですね。

AKi:だからこそ、“そうじゃないんだよ”ということを、続けることで証明したかったんです。ソロを始めてすぐに飽きたからやめるようなことはしたくなかった。僕も覚悟があってやっているので、少し上手くいかないことがあったからといって、“思ったのと違う”とか言ってやめることは絶対に嫌だったんです。だから、できないことをできるようにしていかなきゃいけない。“ベーシストだから”といって歌から逃げちゃダメだし。真剣に取り組んだ結果、シドの隙間ですけど、ソロが10年近く続いているのかなとは思いますね。「最初は不安でしたけど、今はすごく応援してます」というファンの方々の気持ちもどんどん伝わってきたし、ソロを応援してくれている人の気持ちがすごく分かる。シドを愛してくれているからこそ、そういうふうに思っちゃっていたんだろうなって。だから今は逆にうれしいです。

──シドのメンバー間の関係性に、ソロ活動はいい影響をもたらしていますか?

AKi:そうですね、たまにShinjiがフラッとライブを観に来てくれたりするし。

──先ほどもお話にありましたが、マオさんの気持ち、ヴォーカリストというものへの理解が深まったことによる変化もありますか?

AKi:特に僕がヴォーカルに挑戦したので、ヴォーカルの気持ちがやっぱり分かりやすいというのはありますけど。マオくんだけじゃなく、ドラマーとかギタリストに関わることも、ソロを経験してからより気持ちが分かるようになったというか。

──このアルバムを引っ提げたツアーが6月15日からスタートします。バンドメンバーは、ギターにHIROTO (Alice Nine.)さんと加藤さん、ドラムは影丸さんですね。HIROTOさんは2月3日の<AKi LIVE 2024「Birthday Bash!」>で、一夜限りのAKiスペシャルバンドの一員として参加されていました。あの時は咲人(G / NIGHTMARE)さん、Shinya(Dr / DIR EN GREY)さんという豪華メンバーでしたね。

AKi:いや~、もう奇跡ですね。自分の誕生日という名目を使わないと絶対できなかったと思う(笑)。「どこを観ていいか分からなかった」というメッセージがファンの子たちからめっちゃ届きましたよ。HIROTOと咲人くんは、それぞれのバンドの中で核となる二人で。プライベートでも親交があったし、“いつか一緒にやりたいな”と思っていたので、<Birthday Bash!>に誘ったんです。Shinyaさんは以前からいろいろなところで僕を助けてくださっていて。昔、<Birthday Bash!>を神奈川・川崎CLUB CITTA'でオールナイト開催した時(2018年2月2~3日)も来てくれて。最近はそれほど行けてないですけど、一緒にお食事に行っていただいたり、プライベートでもすごくお世話になっているんです。

──今年2月の<Birthday Bash!>の時点で、6月からのツアーにHIROTOさんがバンドメンバーとして参加することは決まっていたんですか?

AKi:はい、発表はしてなかったですけど。HIROTOは昔からの知り合いですし、彼と思い切り音を出してみたいなと思って。前に一度、僕のライブに飛び入りしてくれたこともあったんです。「AKiのライブでギター弾きたい!」っていきなり電話がきて、「じゃあ名古屋でやるから、おいで」と言ったら本当に出てくれたという。

──影丸さんとのつながりは?

AKi:イベント<V系って知ってる?>(2022年12月@日本武道館)で初めて会ったんです。打ち上げで、影丸くんが結構飲んでいる状態だったんですけど(笑)、シドに対する彼の熱い想いを聞きながら、すごくうれしいなと思いましたし、「何かあったら一緒にやろうね」と言っていたのが今回実現しました。スケジュールが合ったのが奇跡だと思っていて。こればっかりはタイミングですし、“二度とない”と言ってもいいぐらいのツアーだと思うので、ぜひ観に来てほしいですね。最高な夏にしたいと思います。

──豪華バンドを携えて真ん中に立つAKiさんは、ファンの皆さんにどんな姿を見せたいですか?

AKi:僕の根底にあるのは単純に言うと、“ロックってカッコいいんだよ”ということなんです。だから、自分の好きな音を思いっきり鳴らして、それに共感してくれて、楽しんでくれたら最高です。

──楽しみ方に対するリクエストはないですか?

AKi:“こうしてください”とかはあまりないかな。とにかく体感して、楽しんでほしいです。後ろでゆっくり観てもいいし、前でノリノリになって観てもいい。

──自由な空間になるわけですね。

AKi:そうですね。黄色い声援だけいただければ(笑)。

──インタビュー序盤で、ご自身の年齢のことも話題に出ました。AKiさんが思い描く、今後のアーティストとしての理想像を聞かせてください。

AKi:“今が一番カッコいいね”と言われる人になりたいですね。“昔は良かった”じゃなくて、“今が一番”と言われるためには、音楽もそうですけど、もっともっといろんなところで活躍しないとなとは思います。もちろんシドがあってのソロなので、いろんな意味で音を表現していきたいなって。

──これからもシドとソロを並走していかれるんですよね?

AKi:そうですね。素敵な音楽の旅をし続けたいなと思います。

──AKiさん自身はカッコ良くあるために、日常的にどんなことを意識されていますか? 例えばジムに通うとか。

AKi:実は、今日もジム帰りなんです(笑)。まぁトレーニングもそうですけど、僕はお酒が好きなのでいっぱい飲むことですかね。ストレスを溜めないことも大切なのかな。ただ、飲み過ぎると身体に良くないので、運動したり食べ物を節制したりして気を付けつつ。“0か100か”って生きづらいじゃないですか。意識するのはそのバランスですね。

──ツアー先でも、バンドメンバーの皆さんと宴が開催されるんでしょうか?

AKi:その予定ですけど、皆さんのご都合もございますので…(笑)。参加していただけるのであれば、ライブの話なんかしながら宴を、と思っております。

取材・文◎大前多恵
撮影◎hy (ライブ)

■アルバム『Free to Fly』

2024年6月5日(水)発売
【限定盤(2CD+ダウンロードカード)】
DCCA-131〜3 ¥6,600(税込)
※通販およびツアー会場にて販売
▼CD DISC 1
01. Devotion
02. ODYSSEY
03. OVERRUN
04. Free to Fly
05. FATE
06. Bluffing
07. Salvation
08. Colors
09. The Same Dream
10. Only One
▼CD DISC 2
01. Devotion DEMO
02. ODYSSEY DEMO
03. OVERRUN DEMO
04. Free to Fly DEMO
05. FATE DEMO
06. Bluffing DEMO
07. Salvation DEMO
08. Colors DEMO
09. The Same Dream DEMO
10. Only One DEMO
▼ダウンロードカード収録内容
・音源MP3データ(DISC 1収録音源のみ)
・「Free to Fly」Music Video
・Making of 「Free to Fly」
・セルフライナーノーツ
※CD/ダウンロードカードの収録内容は変更になる可能性がございます。

■<AKi Tour 2024 『Free to Fly』>

6月15日(土) 神奈川・Thunder Snake ATSUGI
7月06日(土) 愛知・名古屋ell. FITS ALL
7月07日(日) 大阪・OSAKA MUSE
7月13日(土) 埼玉・HEAVEN’S ROCKさいたま新都心VJ-3
7月27日(土) 東京・渋谷WWW
▼バンドメンバー
Guitar:HIROTO (アリス九號.)
Guitar:加藤貴之
Drums:影丸 (-真天地開闢集団-ジグザグ)

関連リンク

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