食品、見た目そのままで軟らかく 石川県工試、技術を開発 ヤクルト薬品工業と共同

見た目そのままに軟らかくしたレンコン=金沢市の石川県工業試験場

  ●加賀れんこんなど高齢者向け食材

 石川県工業試験場(県工試)は5日までに、ヤクルト薬品工業(東京)と、加賀れんこんなどの県産食材を見た目そのままに歯茎でつぶせるほど軟らかくする技術を共同開発した。特別な設備が必要なく、食材本来の味への影響が小さいのが特徴。高齢化が進む中で軟らかい食材のニーズは高まっており、病院や介護施設などへ食事を提供する企業への技術移転を目指す。

 食材を冷解凍した後に、酵素とミネラル成分を含む溶液に浸し、オーブンで蒸し煮にすることで、形状を維持したまま軟化させることに成功した。

 日本介護食品協議会が定める基準のうち「容易にかめる」「歯茎でつぶせる」を満たす。食材の組織を分解するための酵素の選定などはヤクルト薬品工業が協力した。

 県工試によると、かむ力やのみ込む力が弱くなった人向けには、これまで「刻み食」や「ミキサー食」が中心だった。食べやすい一方で、見た目が悪く、食欲低下の一因になっていたという。近年は見た目にも配慮した軟らかな食品の研究が進んでいる。

 県工試が開発した方法は、一般的な業務用オーブンで製造可能なため特別な設備を導入する必要がない。また、調味料の一つであるミネラル成分を利用するため味に違和感を与えない。

 レンコンのほか、タケノコやゴボウ、肉などでも応用できる。県工試化学食品部の武春美研究主幹は「高齢者施設やレストランなどでこの技術を広めていきたい」と話した。

© 株式会社北國新聞社