金沢仏壇職人がキリスト教祭壇 家庭用、蒔絵施し 販路開拓、後継者育成に

金沢仏壇商工業協同組合が制作したキリスト教の家庭用祭壇=金沢市大桑2丁目

  ●販路開拓、後継者育成で制作

 金沢仏壇商工業協同組合は5日までに、仏壇制作で培った伝統の技術を生かし、キリスト教の家庭用祭壇を完成させた。金沢仏壇の特徴である蒔絵(まきえ)を盛り込んだほか、ブドウの木などキリスト教のモチーフを表現した。蒔絵のキリスト教用具は、16世紀に西洋から来日した宣教師も好んで作った歴史があり、ゆかりが深い。仏壇の需要が減少する中、新たな宗教用具として提案し、販路の開拓と後継者の育成につなげる。

  ●3種類用意

 金沢仏壇商工業協同組合が試作した家庭用祭壇は3種類となる。いずれも幅40センチ、奥行き30センチで、高さは50~75センチ。主要6工程の職人が分業で仕上げた。

 うち1種は戸の正面に主キリストと弟子の関係の例えに用いる「ブドウ」の木を彫刻で表現し、内側に聖母マリアを象徴する花「白百合」を蒔絵で描いた。他の2種は、十字架を重ねた格子戸を組子細工で取り付けた。3種とも壇の側面に螺鈿(らでん)で模様を施し、奥の板には教会をイメージしてアーチ状に金箔(きんぱく)を貼った。

 金沢仏壇の職人は高齢化が進む中、仕事も少なくなり、なり手不足に拍車が掛かる。約20年前に52人いた組合員も約10年前に37人、今年は17人まで減った。

 組合の杉林孝幸副理事長(75)は昨年3月、工芸コーディネーターの勧めで都内のキリスト教書店「教文館」の教会用品売り場を訪問。仕事の受注増に向けて助言を求め、家庭用祭壇を開発して同店で販売することにした。市の金沢ブランド工芸品開発促進事業の補助を受け、制作した。

 蒔絵は、桃山時代、キリスト教の宣教師たちがその美しさに目を奪われ、聖書を置く台などに使ったことがきっかけとなり、西洋にも広く知られるようになった。時代を超えて家庭用祭壇の利用拡大にも期待がかかる。

 祭壇は石引4丁目の組合事務所などで展示する。杉林さんは「後継者育成や産地維持につながる突破口になればいい」、蒔絵師の大竹喜信さん(50)は「新しい分野に挑戦し、需要を拡大したい」と話した。

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